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竜と魂のマインクラフト

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第二章

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第二章:実存と物語

第一節:言語と物語

言語は一般的に、「創界人が自らを識ろうとする欲求の発現」と理解される。言語が表現する対象は、実存を起点として識子から宇宙までの全存在に及ぶ。

言語による存在の描写を物語という。物語の内容は倫理実像に、形式は原話理論に大別される。倫理は「存在のあるべき姿」、実像は「存在のあるがままの姿」の物語である。原話は「言語の構成的な展開」、理論は「言語の論理的な接続」である。

倫理の原話を信仰、倫理の論理を哲学、実像の原話を歴史、実像の理論を科学という。各物語が到達すべき「存在の真の姿」を真理という。

表:物語の分類
物語原話理論
倫理信仰哲学
実像歴史科学

第二節:実存の物語

第一項:三元素

「自らとは何か」を問う創界人の物語は、実存の探求から始まる。実存は、三元素からなるとされた。死者は肉体を残して意識を失うことから、は肉と魂からなるとされた。死者の肉体にが生えることから、肉は魂とは別に命を宿すとされた。創界人は、三元素を実存の根本原理とし、三界を物語った。

【肉】実存を成す肉体。
【魂】実存を為す意識。
【命】実存を生す能力。

第二項:死者と殯

創界人の原始的な葬礼では、死者の肉体は腐朽するまで安置され続けた。これをという。創界人は、殯における死者の肉体の変遷を見守る中で三元素を見出した。

創界人が長期間の殯で死者を葬送した理由は二つある。一つは死者の蘇生の監視、一つはへの抵抗である。創界では度々、竜のによって創界人が滅却されていた。殯は、竜禍を生き抜いた死者が静穏にを全うする儀式であった。死を過ち蘇った実存は、冥界に堕ちるとされた。

第三項:魂の物語

創界人は、実存の本質は魂にあると信じた。死後の「魂の行方」は無二の関心事であり続けた。魂が永遠に存続する「魂の憩」は生を超越する歓喜、魂が完全に消滅する「魂の歿」は死を凌駕する恐怖であった。

創界人は、自らの「魂の行方」を識るために物語を編んだ。実存を思索した創界人は、倫理によって自らを律した。倫理は、魂を赦す信仰と、因果を説く哲学を生んだ。実存を観察した創界人は、三界の実像を克明に描いた。その軌跡は歴史として記録され、知識は科学として構築された。

第三節:実存の構成

常界の実存である創界人は、粒子性の識子のみを知覚する。創界人は、肉とそのを観察し、魂と命を洞察することで、実存の物語を精緻に拡充した。創界人による実存の理解は、識子の動態をよく近似した。

【肉】粒子性の識子が構成する物質。
【魂】波動性の識子が記録する情報。
【命】波動性の識子から構成された物質。
【痕】粒子性の識子へと記録された情報。

第一項:肉

実存の物質を構成する粒子性の識子をという。実存の肉と他の識子の相互作用を経験という。経験によって識子場に振動が生じ、肉の粒子の一部が波動へと遷移する。波動性の識子に記録された経験の情報を記憶という。

第二項:魂

実存の記憶を記録した波動性の識子をという。常界の識子場では魂の波動は安定せず、瞬時に粒子へと遷移する。新生した粒子は周囲の肉と相互作用し、その経験は新たな魂となる。肉と魂の循環的な遷移をといい、縁における魂の存在確率を「魂の濃度」という。「魂の濃度」は肉の経験に伴って上昇し、やがて飽和する。過飽和に達した魂は「経験の結晶」として析出する。これを魂珠という。

第三項:命

魂から新たな実存を生す力をという。「魂の濃度」が飽和した識子場では、波動から粒子への遷移が遅延し、中間体が生成される。これをという。一般的に、胤は躰から離脱すると粒子へと遷移し、新たな実存の肉となる。胤を形成する実存を、胤から生成される実存をという。胤は親の記憶を記録した波動を内在するため、親の獲得形質は子へと遺伝する。

第四項:痕

経験によって魂へと遷移した肉の形跡をという。痕の形状は経験の情報と等しい。異界の識子場では肉の粒子は安定せず、瞬時に波動へと遷移する。このとき、痕に記録された情報が展開される。

第五項:肉の様態

生と死

全ての肉は経験をして魂と縁を結ぶ。肉と魂が結縁した状態を、絶縁した状態をという。

物・躰・屍・躯

魂と結縁しただけの肉を、結縁した魂で飽和した肉を、魂と絶縁した肉を、無縁の魂に侵された肉をという。物と躰は「生の肉」、屍と躯は「死の肉」である。

成長

躰が経験を重ねると、飽和限界を超えた魂が縁から零れる。幼体では、この外縁の魂は肉へと遷移し、躰の一部として復縁する。これを成長という。成長は痕を癒すことがある。成体では、外縁の魂から肉への遷移が遅滞し、胤が生成される。過飽和に達した外縁の魂は、魂珠として析出する。

老化

躰を構成する粒子の配列の擾乱を老化という。経験による痕の形成や、魂との循環的な遷移による肉の代謝は、躰を徐々に老化させる。外傷などの激しい経験による大きな痕は、急激に老化を進行させる。著しく老化した躰は縁を維持できず、命を失い、魂を手放して屍となる。

帰土

死後の屍にも微かな経験は継続的に生じ、肉と魂の新たな縁が紡ぎ出される。縁を得た屍は物へと帰る。これを帰土という。

反魂

肉と絶縁した魂や魂珠を幽魂という。屍から遊離した幽魂は、依代となる物や屍を求めて遊走する。幽魂が無縁の肉を侵すと躯となる。これを反魂という。躯になり損ねた幽魂の波動は、常界では粒子へと遷移して霧となる。

第六項:魂の様態

還魂

屍から遊出した魂珠は、常界でも暫時その結晶性を維持する。魂珠の一部が粒子へと遷移し、成長と類似した過程を経て躰が再構成されることがある。これを還魂という。還魂において、粒子化した波動に記録されていた記憶は失われる。

転相

屍から遊出した魂珠は、遷移せずに異界へと転相することがある。

第七項:命の様態

胤が肉へと遷移し、別の実存である子を生成することをという。「生を殖やす」ことから、胤による殖を生殖ともいう。二個体の交配生殖を繁殖、一個体の単為生殖を増殖という。繁殖性の胤を性子、増殖性の胤を種子という。性子や種子から生成された肉は、経験によって魂と縁を結び、子の躰となる。生殖における子は、親とは独立した実存である。

胤が肉へと遷移せず、他の実存を冒して胤のまま存続することをという。「生を蝕む」ことから、胤による蝕を生蝕ともいう。蝕性の胤を胞子といい、胞子に冒される実存を宿主という。蝕の識子場では、宿主の魂は胞子への遷移を強いられ、肉は縁を失い屍となる。宿主の死によって、胞子が実存の主体となる。生蝕における子は、親から複製された実存である。

第四節:実存の分類

創界人は、肉・魂・命の様態によって実存を分類した。実存は、生・死・魂・命の部類に大別され、さらに三元素の相違に基づいて細分された。

表:実存の分類
部類分類魂珠
- -
有縁 - 鉱石
- - 鉄偶
- 植物
有縁 動物
- -
- - 魂砂
無縁 - スケルトン
無縁 ホグリン
有縁 - 帝国人
- 単体 - 異界人
- 菌類
有縁 カーナント
無縁 ゾンビ
- 単体 シュルカー
- 岩盤

第一項:物

は、魂と結縁しただけの肉のみからなる「生の実存」である。物は、肉の様態であり、それのみからなる実存の分類名でもある。

物は、大地を構成する地物と、有用な資源である鉱物に大別される。地物は、ツルハシで採掘できる岩石と、シャベルで採取できる土砂に細分される。鉱物は、動力源となる活石、希少石である宝石、導電性のある金属に細分される。

表:物の実存

第二項:玉

は、物および物と結縁した魂珠からなる「生の実存」である。

岩石に高圧がかかると、肉が圧縮されて「魂の濃度」が高まる。過飽和に達した魂は魂珠として析出し、「魂の濃度」が低下した肉は鉱物へと変性する。生成された、鉱物と魂珠を含む岩石を鉱石という。玉と鉱石は同義である。

表:玉の実存

第三項:偶

は、魂で飽和した躰のみからなる「生の実存」である。

躰が経験で得た魂を、アメジストは成長に、その他の偶は運動に使う。

一覧:偶の実存

第四項:妖

は、魂で飽和した躰に命を宿した「生の実存」である。

表:妖の実存

第五項:獣

は、魂で飽和した躰に魂珠を懐き、命を宿した「生の実存」である。

表:獣の実存

第六項:屍

は、魂と絶縁した肉のみからなる「死の実存」である。屍は、肉の様態であり、それのみからなる実存の分類名でもある。

一覧:屍の実存

第七項:幽

は、物や屍が魂に侵されて反魂し、躯となった「死の実存」である。

一覧:幽の実存

第八項:鬼

は、物や屍が魂珠に侵されて反魂し、無縁の魂珠を懐く躯となった「死の実存」である。

表:鬼の実存

第九項:猥

は、鬼が新たに命を宿した「死の実存」である。

一覧:猥の実存

第十項:仙

は、魂珠と、その一部が還魂して再構成された躰からなる「魂の実存」である。

表:仙の実存

第十一項:夢

は、異界へと転相した魂珠のみからなる「魂の実存」である。

一覧:夢の実存

第十二項:菌

は、魂が胞子へと遷移し尽くした、屍と命からなる「命の実存」である。

表:菌の実存

第十三項:痾

は、胞子が獣を冒した「命の実存」である。

痾は、胞子と獣が共存する実存である。菌を排除すると獣に戻り、蝕が進行するととなる。

一覧:痾の実存

第十四項:傀

は、痾の蝕が進行した「命の実存」である。

胞子が獣の縁を蝕み、肉と魂が絶縁すると傀となる。胞子に冒された鬼も傀という。傀の魂珠が胞子へと遷移し尽くすと、傀は菌となる。

表:傀の実存

第十五項:結

は、胞子が夢を冒した「命の実存」である。

結は、胞子と夢が共存する異界の実存である。蝕の識子場において、夢の魂珠は胞子へと遷移する。同時に、異界の識子場において、胞子の粒子性は波動性の魂へと遷移する。魂と命の循環的な遷移をという。

一覧:結の実存

第十六項:奇

は、上記の十五種に分類されない実存である。

表:奇の実存
岩石岩盤有魂
冷氷
凍氷
積雪
雪竏
粉雪
溶岩岩盤
エンドポータルフレーム
強化された深層岩
ヴェックス
クリーキング
ガスリン

{ここまで改稿済み}


{ここから改稿予定}

第五節:実存と倫理

「自らとは何か」を問う創界人は、「自らのあるべき姿」を慮った。その思索を敷衍した、「存在のあるべき姿」の物語を倫理という。倫理は、創界人の主観的な行動規範である。

自らの本質は魂にあると信じた創界人にとって、「存在のあるべき姿」とは「魂のあるべき姿」でもあった。死後の魂があるべき姿を全うするために、生前の魂はどうあるべきか。それが倫理の問いである。

魂の旅路

死によって肉と絶縁した魂が辿る道程を「魂の旅路」という。魂が旅路を遂げると死が完結する。旅路を誤ると、反魂や還魂に陥り、魂は再び肉に囚われる。

魂の純度

「魂の旅路」の経路は、魂の質によって自ずと決まる。この性質を「魂の純度」という。高純度の魂は正道の旅路を往き、低純度の魂は外道の旅路を迷う。

罪・罰・業

創界人は、肉の経験が魂に記憶されることから、生前の行いによって「魂の純度」が決まるとした。魂を濁す行為をといい、罪に応じて「魂の旅路」が過酷になることをという。この因果をという。倫理の要諦は、肉を律して魂を安んじ、業を調えて「魂の旅路」に備えることである。

第一項:実存と信仰

倫理を遵守するための原話を信仰という。極力多数の魂を赦すことが、信仰の究極的な使命である。

魂の行方・憩・歿

「魂の旅路」を経て、魂は肉から解脱する。解脱した魂が迎える結末を「魂の行方」という。

魂が魂として永遠に存続することを「魂の憩」という。創界人は、自らの本質である魂の永続を望み、「魂の憩」に至るために信仰を求めた。

魂が三界から完全に消滅することを「魂の歿」という。創界人は、自らの本質である魂の滅失を恐れ、「魂の歿」を免れるべく信仰に頼った。

決定論と未決論

魂は操作不能で、生前の行いによって「魂の行方」は決定されているという考えを決定論という。人民支配や社会秩序の維持に都合が良く、封建的な国家制度と親和性が高い。不安定な世相では、人々の無気力や社会の停滞を招きやすい。

魂は操作可能で、死後の選択と偶然によって「魂の行方」は変化するという考えを未決論という。個人主義や実力社会の発展と相性が良く、革新的な思想信条と融和性が高い。流動的な時代には、刹那主義や反体制主義へと転化しやすい。

魂の救済

創界人を「魂の憩」へと導くことを救済という。決定論では、魂は業に従って「魂の旅路」を歩き、「魂の行方」を受容する。救済の目的は、超越的存在と契約して「魂の憩」を生前に得ることである。

魂の復活

創界人が「魂の歿」から蘇ることを復活という。未決論では、魂は業に抗って「魂の旅路」を拓き、「魂の行方」を選択する。復活の目的は、超越的存在を超克して「魂の歿」を死後に覆すことである。

第二項:実存と哲学

倫理を省察するための理論を哲学という。倫理を論理的にすることが、哲学の本質的な課題である。

実存の三元論

肉・魂・命の三元素によって実存を定義する理論を「実存の三元論」という。実存論ともいう。実存論では、三界は「魂と命が肉を奪い合う世界」であり、歴史は「魂が真理を求める物語」である。実存論は、心存としての創界人の意識の中核であり続けた。

古典的実存論

肉を中心に、「肉と魂」「肉と命」の関係性で実存を定義した理論を古典的実存論という。古典的実存論では、無肉の実存は考慮されなかった。物質である肉と比べ、情報である魂や機能である命の理解が不充分だったためである。

実存論

無肉の実存を含む標準的な「実存の三元論」は、視魂術が魂を可視化し、生物学が命を再分類した後に成立した。

存在論

第六節:実存と実像

「自らとは何か」を問う創界人は、「自らのあるがままの姿」を顧みた。その観察を集積した、「存在のあるがままの姿」の物語を実像という。実像は、創界人の客観的な認識基盤である。

いかにして存在はあるかが、実像の問いである。

第一項:実存と歴史

実像を理解するための原話を歴史という。

「魂の行方」を見定めるために、魂の来歴を

政治学・経済学・社会学など

第二項:実存と科学

実像を探求するための理論を科学という。「創界人は三界を認識する心存である」「創界人の本質は魂である」という二つの命題は、「創界人の魂は心存の性質を有する」という結論を導く。

命存学
物理学

第七節:実存と真理

「自らとは何か」を問う創界人は、「自らの真の姿」を欲した。その探求が結実した、「存在の真の姿」の物語を真理という。真理は、創界人の絶対的な存在原理となるはずであった。

真理は、創界人にとって識子一元論として顕れる。

少数の存在が、肉・魂・命の三元素の実態は識子の顕れであることを認識し、非実存論的に実存を理解した。「実存の一元論」は、識子を根源要素として三界を記述する理論である。識子論ともいう。三界の真理である識子論は歴史を通じて何度か現れたが、そのたびに消失するか封印された。


{以下、改稿前の文章}

第五節:信仰

第二項:竜信仰と魂信仰

三界創世の時代、「魂の行方」は「魂の歿」しかなく、恐怖の結末でもなかった。魂は波動性の識子に記録された情報であり、三界の情報量である「魂の密度」が過剰に高まると、宇宙が不安定になる。竜は本能的にこの摂理を認識しており、「魂の密度」の増大を感知すると姿を現し、「魂の焔」で実存を燬き払って「魂の歿」へと導く。創界人は、絶対的な終末をもたらす竜を、単純に畏怖し、素朴に崇拝した。これが竜信仰の始まりである。

その後、霊峰の大噴火によって竜が激減し、「魂の歿」に至らない実存が増加した。行方を失った魂は躯となって地上に湧いた。創界人は「生前の悪行が屍を躯にする」と解釈し、「穢れ」の概念が生まれた。一部の創界人は、竜による「魂の歿」が一種の救済であったことを悟り、多くの創界人は、「魂の歿」に代わる「魂の行方」を求めるようになった。

竜が吐く絶界の「魂の焔」は、稀に位相を穿ち、創界と異界の裂け目である創異円を生成した。一部の魂は創異円から異界に転相されるようになり、創界の「魂の密度」は低下していった。悠竜時代の後期には、竜の出現頻度が減少し、竜を知る創界人も少数となった。代わって、創異円から異界人が現れ始め、創界人は、創異円が魂を肉から解放することを知った。この新たな「魂の行方」は「魂の憩」として歓迎された。創界人と異界人は創異円を禁殿で覆い、「魂の安処」とした。竜は、人々に創異円を与える存在へと変容し、竜信仰と魂信仰が結び付いた。

悠竜時代末期、「太古の遊人」が飛異魂開座し、全ての魂が憩を得るようになった。「魂の密度」は一挙に低下し、竜は姿を消した。古世紀太古文明では、飛異魂を聖座として祀る聖殿が「魂の安処」となり、「魂の行方」に対する不安は解消された。そのため逆説的に、竜が導く「魂の歿」が極端に恐れられた。

古世紀末期、「太古の崩壊」によって飛異魂は沈黙し、「魂の安処」は失われた。ほどなく、第一帝国の還座が「冥界の安処」として開座した。冥界を目指すようになった魂は、「魂の篩」である岩盤によって「魂の純度」ごとに選別され、異なる旅路を辿るようになった。不純な魂は岩盤に遮られ、創界で躯と化した。低純度の魂は、岩盤を越える際に情報が失われ、冥界の躯となった。高純度の魂のみが、情報を保持したまま岩盤を越え、第一帝国で躰を得た。

古世紀の創界人にとって、これは二つの観点から深刻な問題であった。一つは、生前の行いに応じた「魂の純度」によって「魂の旅路」が異なること。もう一つは、還座は「魂の安処」ではなく、魂は憩も歿も迎えていないことである。創界人の憂慮は、太古文明を継承した深層文明古代文明において、様々な宗教を生んだ。

「魂の密度」が高まった古世紀末期、冥界から滲出した辺境伯が、創界人を暴力的に「魂の歿」へと導いた。ほぼ同時期に、冥界から光臨した皇女が、沈黙していた飛異魂を開座して「魂の憩」を復活させた。しかし、皇女が辺境伯を封印したことで、「魂の行方」の扉は再び閉ざされた。現在に至るまで、この問題は解決していない。宗教者の間では、「魂の密度」の増大と、竜の再臨が危惧されている。

リスト:魂の安処

悠竜の安処】創異円を覆った禁殿のこと。
太古の安処】聖座(飛異魂)を祀った太古文明の聖殿のこと。
冥界の安処】還座を祀った第一帝国の「黒白の聖殿」のこと。「魂の安処」ではなく、魂に躰を与える。
創界の安処】聖座(飛異魂)を祀った第二帝国の「純白の聖殿」のこと。

第三項:罪と罰

「魂の旅路」において創界人が最も忌避すべき運命は、自らの魂が再び肉を纏い、躯と化すことであった。彼らはこれを「穢れ」と称した。穢れとは、躰が犯した罪であり、罪を背負った魂である。「穢れ」によって「魂の純度」は低下し、最も穢れた「寂しい魂」は、その罰として最深層に堆積し、穢響と化す。躯の温床である穢響は、「穢れ」の実体として徹底的に厭悪された。創界人はその幼児期に、「悪いことをすると躯になる」と戒められる。実存論では、「穢れ」は「肉が魂に与える属性」として理解される。肉の経験が魂として記録されるため、論理的には整合しているが、その機序は定かではない。

汚れ」は「辱められた肉」のことで、業の因果や魂の「穢れ」とは根本的に異なる概念である。「汚れ」は善悪や秩序とは別の枠組みで定義され、ときに倫理的な帰結にも反することから、頻繁に「穢れ」と混同される。男が性欲に任せて女を凌辱した例では、男の行為は罪であり、彼の魂は「穢れ」を得る。一方、犯された女の肉は「汚れ」とされる。その女が妊娠して流産したなら、水子の肉は極めて強力な「汚れ」となる。行為の主体ではなく、客体の肉に烙印される「汚れ」の思想は、カーナントを原点とする。ゾンビに傷付けられた創界人は、躰が躯と化し、カーナントに変貌する。同情すべき被害者は、しかし「肉が汚れた」として排除される。

実存論では、「汚れ」は「命が肉に与える属性」として説明される。魂と命は肉を奪い合う関係にあるが、創界人は、魂が自らの本質と考え、その「穢れ」のみを思索してきた。他方、肉の増殖を目的とする命の衝動には無自覚であった。子を生むための営為、すなわち生殖に始まり、暴力による他者の排除や、裏切りによる自己の拡大を含む、命のあらゆる行いから、不可避的に「汚れ」が発生する。

「穢れ」と「汚れ」の混合は、創界で最も醜悪な思想に結実する。すなわち、肉の「汚れ」によって魂の「穢れ」を浄化する、徹底した肉の「汚れ」が実存を「魂の歿」へと導く、などである。「穢れ」と「汚れ」は意図的に混同されたという、恐るべき指摘もある。

第四項:魂の詩

魂の詩」は、創界人の魂観の変遷を詠った短い詩編である。歴史的に何度か加筆され、異本も多いが、聖教団によって整理された正本が広く流布した。ほとんどの創界人が諳んじることができる。

文献:『魂の詩』(聖教団正本)
愛しい創界人の魂は、その姿と記憶を手放し、憩を得て、霊峰に微睡む。

優しい創界人の魂は、その姿と記憶を眼差し、躰と結び、帝国に揺蕩う。
哀しい創界人の魂は、その姿と記憶が色褪せ、躯を纏い、辺境を彷徨う。
寂しい創界人の魂は、その姿と記憶を見捨て、穢と化し、深層に蔓延る。

空しい創界人の魂は、その姿と記憶を背負い、歿を求め、常界を流離う。
『魂の詩』解題

【第一段落】「太古の安処」は、全ての魂に分け隔てない憩を与えていた。これがであり、愛を享受した魂は「愛しい魂」と呼ばれた。

【第二段落】「太古の安処」が失われて第一帝国が成立すると、到達不能な「魂の行方」よりも、その過程である「魂の旅路」が重視されるようになった。信仰の重心は、魂の解放や救済から、罪と罰へと移行した。魂は、罪深い低純度のものから順に、「寂しい魂」「哀しい魂」「優しい魂」と呼び分けられ、異なる旅路を辿った。不純な「寂しい魂」は岩盤に遮られ、穢響として最深層に堆積した(三行目)。岩盤を越えて冥界の辺縁に至った魂は、第一帝国に向かって漂うが、純度の低いものから「哀しい魂」として辺境人と化し、辺境を彷徨った(二行目)。最終的に、高純度の「優しい魂」のみが第一帝国へと辿り着き、帝国人として転生した(一行目)。

【第三段落】第一帝国滅亡後、魂は冥界を目指すことすらなくなり、罪を反映した「魂の純度」と、罰である「魂の旅路」も形骸化した。全ては「空しい魂」として漂泊し、「魂の密度」の高まりとともに、「魂の歿」や「汚れ」が人々の関心を集めた。

フロー:魂の旅路
 魂の発生
  ├→魂の安処──(転相)→異界人
  ├→寂しい魂┬─(地表)→躯
  │ (穢響)├─(破壊)→魂珠
創 │     ├┬(集積)→アメジスト
界 │     │├(残滓)→魂砂─(濃縮)→ウォート
  │     │└(残渣)→魂土─(燃焼)→魂の炎
  ↓     └(招魂函)→躯
  岩盤
  │
  ├→哀しい魂┬(残滓)→魂砂─(冥魂函)→躯
冥 │     ├(残渣)→魂土─(燃焼)─→魂の炎
界 │     └───→辺境人
  └→優しい魂─(還座)→帝国人

第四節:倫理

実存のあるべき姿を倫理という。倫理は、創界人による原初的な死生観に始まる。創界人は、死後に肉が残ることから、は肉と魂からなるとした。屍肉にが発することから、肉は魂とは別に命を宿すともされた。肉・魂・命は、実存の根源要素とされ、世界を認識する基盤となった。創界人は、自身やを暗黙の基準に、肉・魂・命の本来的な在り方を規定し、倫理とした。倫理が精緻化される過程で、論理的な実存論が芽生え、超越的な信仰が息吹いた。

倫理・実存論・信仰の核心は、創界人が自らの本質と信じる魂である。創界人が死ぬと、その記憶である魂珠が放出される。常界では不安定な魂珠が基底状態に移行するまでの運動を「魂の旅路」という。その結末である「魂の行方」は、創界人にとって最大の関心であり続けた。

第六節:生物学

第一項:生物

命存は、自力で生殖する実存である。動物は、死による躰から屍への変化が外形に現れる生物であり、植物はそれが現れない生物である。は、肉が屍であり、生死の区別がない生物である。

性を獲得した動物は交配生殖によって繁殖し、未性の動物・植物・菌は単為生殖によって増殖する。

親が同一の子らを同血という。

第二項:生死

肉を基盤とし、魂を中核とする古典的実存論では、「魂と肉の結合」によって生死を定義する。は、魂と結合した肉であり、この状態をとする。は、魂が遊離した肉であり、この状態をとする。実存が死ぬと、魂が肉から遊離するため、識子場は消滅し、命も失われる。

は、魂と肉が結合も遊離もせず、ただ混合された状態である。死後、肉から遊離した魂は、自身を安定化するために再び肉を纏う。しかし、魂と肉の情報が一致しないため結合できず、躰ではなく躯と化す。躯は、生きてもおらず、死んでもいないが、魂は懐いており、破壊されると魂珠を放出する。

第三項:性

識子場の粒子性と波動性の均衡をという。個体の肉の経験は魂の記憶となり、識子場において、魂の記憶は新たな肉を励起する。このため、個体の躰は、その履歴を反映した特徴を帯び、一般的にはこれが性と理解される。性が未決定の状態を未性という。未熟な未性の個体が、自らの生存に有利と判断した特定の行動を重ねる過程で、識子場の性質が偏向し、肉と魂は後天的に性を獲得する。識子場の粒子性が高いと雄性、波動性が高いと雌性、両者が完全に平衡していると無性となる。未性の個体を、雄性の個体を、雌性の個体を、無性の個体をという。特に、創界人の雄を、雌をという。雄性と雌性を有性といい、等しい有性の組を同性、異なる有性の組を異性という。一般的に、異性は惹かれ合う。交配は、未性を除く三つの性間で可能であり、性は繁殖に影響しない。異性間の子は無性的となり、同性間の子は親の性傾向を継承する。

第四項:色

は、実存の状態を反映した属性である。特に、命の実体である識子場の粒子性と波動性の均衡、すなわち性によって発現する十六色を命色という。個体の命色は、性決定後に、雄性は黒色、雌性は白色、無性は無色に収束する。

第五項:睡眠と夢

睡眠は、「魂と肉の結合」に不可欠な行動である。粒子性の識子である肉の経験は、波動性の識子である魂へと変換される。魂と肉を結合させるためには、一定時間、肉と魂の運動を停止する必要がある。動物は、躰を安静にして睡眠を取り、その時間を確保する。睡眠中に肉と結合しなかった余剰の魂は、として現れ、異界へと消える。

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