- 『悪人志願』江戸川乱歩

2007/04/10/Tue.『悪人志願』江戸川乱歩

光文社文庫版「江戸川乱歩全集」第24巻。

収録作品は『悪人志願』『探偵小説十年』『幻影の城主』、その他の雑文である。全て探偵小説に関する評論、または随筆である。以前に紹介した『幻影城』の戦前版といえよう。

初期の江戸川乱歩は優れた短編を立て続けに発表し、いつしか探偵小説文壇の指導者的立場に祭り上げられるのだが、それと反比例して探偵小説が書けなくなっていく。原稿の求めには評論や随筆 (正直いってかなりヒドいものも多い) で応じるようになり、本書に収められたような本を幾つか出版した。

やたらと泣き言が多く、ときにはフラッと 1年ほど行方をくらましてしまう。本書ではそのような「人間」としての乱歩が滲み出ており、面白いといえば面白い。また、当時の探偵小説界が記述された貴重な資料という側面もある。特に『探偵小説十年』は、後に書かれる大著『探偵小説四十年』の元型であり、記録魔・乱歩の面目躍如といった感がある。

乱歩自身による解題と、編集による注釈が付く。