- 『数学的センス』野崎昭弘

2007/04/18/Wed.『数学的センス』野崎昭弘

野崎昭弘は、以前に紹介した『不完全性定理』の著者でもある。耳に痛そうなタイトルだが、中身は軽やかなエッセイ集である。日記に書いた「自然数が無限に存在することの証明」の出典も、実は本書だ。

数学の威力はその抽象性、一般性にある。しかし本書で扱われるエピソードは全て具体的なものであり、実際に問題を解く過程で「数学的センス」の実例が示される。

直接に数学とは関係のない話も多い。私が気に入った箇所を幾つか引用しておく。

そこで事柄を整理・整頓し、枝葉を捨てて、要点がよくわかるような、形式的にすっきりした説明をすることが時には望まれるわけである。その点をズバリと指摘されたのは、ある研究会議での、吉田耕作先生の次のようなご発言であった。

「わかりやすいように、抽象的に話してください」

(第6話「わかりやすい」ということ)

小平邦彦先生から学生への素朴な質問:「わからないのなら、どうしてわかるまで考えないのですか?」

(同前)