- 『この国のかたち 三 1990〜1991』司馬遼太郎

2006/12/23/Sat.『この国のかたち 三 1990〜1991』司馬遼太郎

「『脱亜論』」という文章を興味深く読んだ。

福沢諭吉はその生涯、言動が首尾一貫している。先年まで 1万円札の顔であったことからもわかるように、非常に素晴らしい人物である。そんな彼の唯一の失態ともいえるのが「脱亜論」である。短いので「脱亜論」全文をアップしておく。

まことに「脱亜論」は、前半においては論理整然としている。ただ末尾の十行前後になって物狂いのようになり、投げつけことばになる。

(「『脱亜論』」)

今回初めて「脱亜論」を読んでみたのだが、色々と考えさせられる。真っ先に思い浮かぶのは征韓論である。誤解されることが多いが、征韓論も脱亜論も帝国主義そのものではない。どちらかといえば「革命 (明治維新) の輸出」である。「我々は明治維新をやってのけたんだ」という強烈な気負いによる勇み足、という程度のものだろう。この勘違いについては、あまり弁護することはできないが、純粋な悪意ではない、ということだけは言っておきたい。

次に想起するのが、フランス革命とナポレオンである。革命で燃え立ったフランスはナポレオンに率いられ、欧州全土を席巻する。しかしナポレオンは皇帝になり、共和制は崩壊、最終的にはフランス帝国自体も瓦解する。帝国陸軍や大東亜共栄圏を重ねてしまうのは私だけではあるまい。