- 『まともバカ』養老孟司

2006/10/05/Thu.『まともバカ』養老孟司

「目は脳の出店」と副題にある。発行レーベルは「だいわ文庫」というのだが、初めて目にする文庫である。

内容は複数の講演を起こしたもので、主題自体は既刊の本で述べられているものが多い。

個人的な思い出を書く。確かある年の生物物理学会だったと思うが、一般市民の公開講座で養老孟司が講演しているのを聴いたことがある。スライドもメモもなく、単なるホワイトボードに「脳」だとか「身体」という文字を書きながら、淡々と話していた。頭の良い人の常で、大層早口ではあったが、言い淀みがほとんどなかったのが印象的だった。練習したスピーチでも、大抵は「あー」とか「えー」とかいう間合いが入るのが普通である。

講演録や対談集では、この手の「あー」「えー」はもちろん削除される。話し言葉もある程度、書き言葉へと編集される。が、俺の記憶に照らし合わせるならば、養老孟司はほぼこの講演録そのままに話している、と思って差し支えない。そんなことを思い出しながら本書を読んだ。