- 黙って食え!

2003/09/21/Sun.黙って食え!

あくまで俺にとっては、という話であるが「食う」というのは非常な快楽である。味がどう、とかいうことではない。食物を口に運び、咀嚼して嚥下する。その繰り返し自体が快楽なのである。だから小洒落た店で小綺麗に盛られた、さも上品で美味い一口ばかりの肉片を勿体ぶって食べるよりも、小汚い部屋でアホのように丼に盛られた飯を海苔だけを頼りにガツガツ食い散らかす方がよっぽど快楽なのだ。幸福なのである。

食事中にベラベラと喋る人間がままおり、これは大変に不愉快である。そりゃあ、友人達と楽しく会話しながら、というのなら愉快である。俺が嫌いなのは、出された料理に何やかやと文句をつけ、蘊蓄を垂れるという輩である。黙って食え。文句があるなら食うな。俺が食ってやる。

何かで読んだことだが「〜なら食べるがなあ」と言い出したら人間お終いだ、という意見がある。これは年配の方に多い症状である。今まで不味いものも美味いものも食べてきており、ものの味がよくわかる。しかも歳を召されているからそれほど食欲もない。そのような人が、若い者から「食事でもどうっすか。魚でも」と誘われたら、つい「美味い鰻なら食いたいけどなあ」と答えてしまうという気持ちは、まあ想像ではあるが推察はつく。

どういう論旨が展開されたのかまでは覚えていないが、俺の読んだ小文は「それは大いなる損失であり、衰えである」と結んでいた。この意見も理解できる。吉野家の牛丼を「昔はあんな不味いものを毎日のように食っててさあ」と言うようになったら、やはり俺は老いているのだろう。

最近、満腹度と食欲の関係が思わしくない。腹一杯食って胃がゴロゴロしているというのに、時間が経つと脳が空腹を訴えている。で、食べることが快楽であるから、つい意地汚く食ってしまう。ああ苦しい、腹が張る、と思いながら食っている。馬鹿である。それとも、まだ若いということか。