- 『ねじ式/夜が摑む』つげ義春

2008/10/18/Sat.『ねじ式/夜が摑む』つげ義春

「つげ義春コレクション」の第1回配本。今月から 1冊/月のペースで、全9冊が刊行されるという。

本書に収録されているのは以下の 16作。

上記の順番でいうと、『ねじ式』から『窓の手』がいわゆる「夢もの」、『夏の思いで』から『日の戯れ』までが「若夫婦もの」となる。どちらも、つげの作品の中で最もよく読まれているであろう一群である。

夢もの

民家から機関車が出現するコマが有名な『ねじ式』、聾唖者の女将の台詞 (「ギョッギョッ」「グフッグフッ」) が印象的な『ゲンセンカン主人』が高名である。しかし俺は、夢の感じを出すために、意図的にコマのパースを狂わせた作品群、『コマツ岬の生活』『必殺するめ固め』『ヨシボーの犯罪』の方が好きである。『夜が摑む』は、その過渡的な段階の作品としても興味深い (この作品には若夫婦ものの要素もある)。

若夫婦もの

つげとその妻をモデルにした (と思わせる構造を持つ。実際はそうでもない) 作品群。若夫婦ものといっても、個々の作品は独立しており、一貫した設定があるわけではない。

妻が良い。彼女と、主人公である売れない漫画家の間には葛藤もないではないが、『無能の人』に見られるような家族の重さはない。いや、まだ『無能の人』はのほほんとしているのだが、『別離』とかはキツいんだよな……。

話が逸れた。とにかく、若夫婦ものにはある種の爽やかさがあって、それは妻のキャラクターに依る部分が大きい。個人的には夢ものよりも好きかもしれない。