- 『歴史の交差路にて』司馬遼太郎/陳舜臣/金達寿

2008/06/01/Sun.『歴史の交差路にて』司馬遼太郎/陳舜臣/金達寿

題名に添えられた「日本・中国・朝鮮」の文字からもわかるが、本書は司馬遼太郎 (日本)、陳舜臣 (中国)、金達寿 (朝鮮) の鼎談を収めたものである。

何かと問題を抱える現代の三国ではあるが、長い歴史を通じて (良くも悪くも) 常に相互作用してきた。にも関わらず、これらの国々はあらゆる面で大きく違い、それぞれがユニークな面を持つ。

鼎談では、三国のみならず、モンゴルなど他のアジアの国々、欧州、米国なども引き合いに、様々なテーマについて語られる。言語、文字、武器、政治、ナショナリズム、民族、文明、文化、家庭、風俗、慣習、食、職、宗教、戦争、近代化、vs 欧米、などなどなど。各主題について交わされる議論の豊饒さ、各人の知識の深さ。理論的に話題が掘り下げられていく様は、とても鼎談本とは思えないほどだ。

各人が、自国を必要以上に自慢することもなく卑下することもない。また、他国を過剰に持ち上げたり蔑視することもない。歴史、国、人々に向けられる愛情が読者にも伝わってくるような、爽やかな読後感を覚える。

セクション毎に注釈が付されており、ともすれば説明不足に陥りがちな会話を補足する。少頁ながら充実した 1冊。