- Translational Research

2006/08/01/Tue.Translational Research

日記の更新が滞っていた T です。こんばんは。

研究日記

病院 → 大学 → 病院。

朝早くから病院で認証式。今月から、退職された研究員女史の肩書きを拝命する。本当に書類上だけのことで、仕事や給料は変わらず。就職してから 1年余り、これで頂いた辞令が 3枚になった。せわしないことである。

大学に行って、初代培養細胞にウイルス感染。Primary culture は実験毎に細胞のクオリティが微妙に異なり、ウイルスもまた、その都度作製するものなので、なかなか難しい。実験系は安定していて、結果の傾向もしっかり出ているのだが、グラフにするとエラーバーが大きくなる。最も簡単な解決策は n を増やすことなんだが、この実験は 1週間に 1度しかできなかったりする。細胞の供給は大学のテクニシャン嬢に頼っており、無理も言えない。まァ、ボチボチ。というか、俺は焦っていないのだけど、ボスが急かしてくる。

病院に戻って、凍結組織の免疫染色。学生時分に線虫を whole mount で蛍光染色していたときから、免疫染色は好きな実験である。(抗原や抗体にもよるが) 難易度がやや高めで時間がかかる実験だけれど、その分、上手く染まったときは最高だ。その点では Western も同じだが、最後に得られるヴィジュアルが黒いバンドだけなので、やはり組織や細胞の染色の方が楽しい。

先週から、細胞を大量に培養している。今月中旬に、某大型動物に移植するための細胞である。操作は単純だが、数が膨大なので時間がかかる。コンタミなどしたら被害は甚大だし、培養スケジュールの遅れは、移植実験をして下さる共同研究の先生にも迷惑がかかる。実験動物にも細胞にも多額の費用がかかっており、時間も人出もかかる。毎日胃が痛い。予備実験だったとはいえ、前回は想定していた細胞数が集まらなかったという苦い経験もある。

大型動物で移植実験をするということは、既に細胞レベルあるいはマウスなどの小型動物で何らかの報告がなされていることを意味する (だから金をかけて大型動物で行うという計画が申請され、許可される)。したがって、そこに新しい知見は期待されておらず、むしろ「予想通り」の結果を出すことが使命となる。そのために大量の細胞を培養するなんてことは、理学部的にいえば「頭の悪い」「つまらない」「力押しの」「金と人さえあれば誰にでもできる」実験、ということになる。確かにそう思う。

translational research
臨床利用を目指す探索的な基礎研究 (WebLSD)

無論、俺は給料を貰ってこの仕事をしているわけで、不満があるわけではない。また、このようなステップを踏まないと、実際の治療には応用できない。応用されない基礎研究は、図書館の肥しでしかない。そう思ったからこそ、俺は進学せずに就職したわけでもある。結局、translational research という、まさに希望していた仕事をさせてもらえるようになったのだが、この領域は本当に難しくて面白い。Translational research については、またいずれ書こうと思う。