- 『対談集 妖怪大談義』京極夏彦

2008/07/12/Sat.『対談集 妖怪大談義』京極夏彦

京極夏彦をホストとする、妖怪がテーマの対談集。対談 (鼎談) の相手は以下の通り。

対談相手によって、話題の選択や深度が全く異なってくるのが面白かった。小松和彦や西山克とは、アカデミックでかなり込み入った議論を繰り広げる一方で、唐沢なをきとは昔の妖怪図鑑で盛り上がるだけだったりする。

妖怪周辺の民俗学をテーマにした対談は面白かった。民俗学も色々と閉塞感を抱えているようで、にわかには信じ難い話も出てくる。

大塚「民俗学はとうに学問としては停滞しきっていますよね。去年、大学で民俗学を教えることになって本当に二十年ぶり位に学会報とかの論文とかチェックしたら、僕が学生だった頃から進歩してない印象でショックだった。それなりに論文の数は書かれているんだろうけど、僕が大学出て二十年の間にどう民俗学が変わったのか、発展したのかが全然、見えない。都市民俗学だって外に出ていった素人に何が出来るとか言われたわりに、それ自体なかったことになっている」

(「民俗学は偽史だったのか?」)

この話を聞いた小松和彦は以下のように述べる。

小松「だから民俗学は柳田教なんて言われるんですよ。その昔、日本民俗学会には会長がいた。柳田です。ところが、柳田が引いた後、誰も会長にならなかった、なれる人がいなかった」

京極「会長不在?」

小松「いまでも不在です。会長の代行の代表理事っていうのはある」

京極「永久欠番ですか (笑)」

小松「お笑いになるかもしれませんが、本当なんですよ。だから、私から見ればそうなった段階でもう滅びの道を歩き始めていたんだろうな、と思いますね (後略)」

(「妖怪学の現在」)

文系の学会のことは理系の俺からはよくわからんのだが、さすがに引いたわ。しかし、妖怪をテーマにゲリラ的 (と言って良いのだろうか) な復権が試みられているのは力強く思えた。