心存である創界人は、言葉によって三界を物語る。物語は、創界人自らを含む常界の実存から始まる。創界人の言葉は、実存を肉・魂・命の三元素に還元する。三元素は識子の顕れと対応するが、創界人は識子の物語を知らない。
実存の記憶を記録した波動を魂という。常界の識子場では魂の波動は安定せず、瞬時に粒子へと遷移する。新生した粒子は周囲の肉と相互作用し、その経験は新たな魂となる。肉と魂の循環的な遷移の場を縁といい、縁における魂の存在確率を「魂の濃度」という。「魂の濃度」は肉の経験に伴って高まり、やがて飽和する。過飽和に達した縁からは魂が析出する。この「経験の結晶」を魂珠という。
魂から新たな実存を生す力を命といい、命を宿す実存を命存という。命存の「魂の濃度」が飽和すると、縁の場における波動から粒子への遷移が遅延し、中間体が生成される。これを胤という。一般的に、命存から離脱した胤は粒子へと遷移し、新たな命存の肉となる。胤を生成する命存を親、胤から形成される命存を子という。胤は親の記憶を記録した波動を内在するため、親の獲得形質は子へと遺伝する。
経験によって魂へと遷移した肉の痕跡を痕という。痕の形状は経験の内容と等しい。
実存の三元素の状態を様態という。
常界では、実存の死によって肉と魂が絶縁すると、縁の波動が粒子へと遷移して「魂の濃度」が急速に低下する。結晶である魂珠は遷移に抵抗性があり、実存の死後も暫時その波動を維持する。肉と絶縁した魂珠を幽魂という。幽魂は絶縁した肉から幽離し、新たな依代となる無縁の肉を求めて幽走する。
実存の肉は、生死の様態と魂珠の有無によって、姿・躰・屍・躯の四種に分類される。命存の「生の肉」を肉体、「死の肉」を死体という。
【姿】肉が経験して魂と結縁し、「魂の濃度」は未飽和の「生の肉」。
【躰】姿の「魂の濃度」が過飽和に達し、魂珠が析出した「生の肉」。
【屍】姿や躰の肉が魂と絶縁し、「魂の濃度」が低下した「死の肉」。
【躯】姿や屍が幽魂に侵され、縁のない肉と魂が同居した「死の肉」。
命存の子は姿として生まれる。子の経験は肉体の「魂の濃度」を高め、飽和させる。飽和した縁から零れた魂は肉へと遷移し、肉体の一部として復縁する。これを成長という。成長は痕を癒すことがある。成長が未了の命存を幼体、完了した命存を成体という。成体が経験を重ねると、飽和した縁から零れた魂から肉への遷移が遅延し、胤が生成され、親となる。親がさらに経験を得ると、「魂の濃度」が過飽和に達し、魂が析出して魂珠となる。
肉体を構成する粒子の配列の擾乱を老化という。成長後の経験による肉の代謝は、肉体を徐々に老化させる。外傷などの激しい経験による大きな痕の形成は、急激に老化を進行させる。著しく老化した肉体は縁を維持できず、魂を手放し、命を失って屍となる。
死後の屍にも微かな経験は継続的に生じ、肉と魂の新たな縁が紡ぎ出される。縁を得た屍は姿へと帰る。これを帰土という。
幽魂が他の実存の躰に入ることを入魂という。幽魂の記憶は躰の肉と結縁し、実存の「魂の濃度」を高める。入魂の経験によって、生者は死者の記憶を知り得る。
幽魂が無縁の屍を侵すことを反魂という。両者は結縁せず、屍の肉は無縁の幽魂を抱く躯となる。
幽魂の記憶の一部が肉へと遷移し、生前の躰が再構成されることを還魂という。肉へと遷移した記憶は失われる。
胤が肉へと遷移し、別の実存である子を形成することを生殖という。二個体の交配生殖を繁殖、一個体の単為生殖を増殖という。繁殖性の胤を卵子、増殖性の胤を種子という。卵子や種子から形成された肉は、経験によって魂と縁を結び、子の躰となる。生殖における子は、親とは独立した実存である。
胤が肉へと遷移せず、他の実存を冒して胤のまま存続することを生蝕という。生蝕性の胤を胞子といい、胞子に冒される実存を宿主という。生蝕の識子場では、宿主の魂は胞子への遷移を強いられ、肉は縁を失い屍となる。宿主の死によって、胞子が実存の主体となる。生蝕における子は、親から複製された実存である。
実存は、肉・魂・命の様態によって、物・妖・獣・尸・鬼・仙・夢・菌の八種に分類される。菌と宿主の共存は、痾・隷・結の三種に分類される。岩石と鉱物の共存を玉、分類不能な実存を奇という。
創界人による実存の分類は、識子の顕れ方の不完全な理解である。実存の物語によって、創界人は自らの本質が魂にあると信じた。この事実が三界の物語を駆動する。
姿のみからなる実存を物という。全ての物は、大地を構成する地物とその派生物である。地物由来の資源を鉱物、地物の加工物を工物、地物や鉱物の「魂の濃度」を高めた物を偶という。地物は、ツルハシで採掘される岩石、シャベルで採集される土砂、氷が凝結した氷雪に細分される。鉱物は、動力源となる活石、希少石である宝石、導電性のある金属に細分される。
| 植物 | 動物 | |||
|---|---|---|---|---|
| 樹木 | 花茎 | 草本 | 菜果 | 寸遊 |
| アカシア オーク サクラ シラカバ ダークオーク タケ ツツジ トウヒ ペールオーク マツ マホガニー マングローブ | アリウム ウィザーローズ ウツボカズラ シャクヤク スズラン タンポポ チューリップ デイジー トーチフラワー バラ ヒスイラン ヒトミソウ ヒナソウ ヒマワリ ポピー ヤグルマギク ライラック ワイルドフラワー | ウィード エンマー オボロゴケ カイソウ コケ サボテン シダ スイレン ツタ ドライグラス ドリップリーフ ブッシュ ホタルソウ | カカオ カボチャ グロウベリー コムギ コンブ サトウキビ ジャガイモ スイートベリー スイカ ニンジン ビートルート | アレイ コウモリ シーピクルス ホタル 珊瑚(種属) ・クダサンゴ ・シカツノサンゴ ・ノウサンゴ ・ミズタマサンゴ ・ミレポラサンゴ |
鬼は、物や屍が魂珠に侵されて反魂し、無縁の魂珠を懐く躯となった「死の実存」である。
仙は、魂珠と、その一部が還魂して再構成された躰からなる「魂の実存」である。
| 創界 | 冥界(帝国人) |
|---|---|
| ガーディアン ・エルダーガーディアン | 帝国人 ・皇女 ・皇帝 |
夢は、魂珠のみからなる「魂の実存」である。
岩石と鉱物の共存を玉という。岩石に高圧がかかると、肉が圧縮されて「魂の濃度」が高まる。過飽和に達した魂は魂珠として析出し、「魂の濃度」が低下した肉は鉱物へと変性する。生成された、鉱物と魂珠を含む岩石を鉱石という。玉と鉱石は同義である。
奇は、現在の基準では分類不能の実存である。