- GATA1

GATA1 in Erythrogenesis

GATA1 は造血系統 (hematopoietic lineage) において、赤血球 (erythrocyte) と巨核球 (megakaryocyte) の最終分化・成熟に必須の転写因子である。GATA1 欠損マウスは、赤血球前駆細胞 (erythroid precursor cell) が生き残らずに成熟しないため、重度の貧血によって死ぬ。

赤血球新生 (erythrogenesis) において、GATA1 遺伝子の欠損は赤血球前駆細胞の成長を阻止し、アポトーシスを引き起こす。この現象は、抗アポトーシス Bcl-xL タンパク質の GATA 依存的な発現とリンクしていると考えられる。逆に、G1E 細胞 (GATA1-deficient erythroid cell line) に GATA1 を導入すると、赤血球の最終的な成熟が誘導される。

マウス GATA1 の C 末端側 Zn finger の変異 C261P は、GATA1 の DNA 結合活性を失わせる。GATA1 (C261P) を発現する G1E 細胞は、赤血球分化能を持たない。

NIH3T3 細胞において、GATA1 の N 末端側 Zn finger は赤血球細胞が機能するのに必要だが、C 末端側は GATA1 依存的なレポーター活性に必須ではない。だが、赤血球およぼ巨核球細胞では N 末端側が必ずしも必要でないという報告もある。

Acetylation of GATA1

GATA1 のアセチル化され得る Lys 残基は、全て Zn finger 近傍にある。11個の Lys 残基の内、8つが C 末端側 Zn finger に存在しており、さらにその内の 7つは Zn finger より C 末端側にある。この領域は、非ヒストンタンパク質におけるアセチル化サイトのコンセンサス配列 (K/RXKK) とも一致する。この領域を除去すると、転写活性と巨核球への分化能が減少する。

human CEACECVNCGATATPLWRRDRTGHYLCNACGLYHKMNGQNRPLIRPKKRLIVSKRAGTQ
mouse *************************************************M*********
rat   *************************************************M*********
chick ********************G*************RL**************L*******V
human CTNCQTTTTTLWRRNASGDPVCNACGLYYKLHQVNRPLTMRKDGIOTRNRKASGKGKKKR
mouse ****************************F*******************************
rat   ************************************************************
chick *S****S*******SPM**********************************V*G****R*

下線; Zn finger、灰色; DNA 結合残基、青色; アセチル化。9859997 

Acetylation by p300

GATA1 は p300 と結合し、p300 によってアセチル化される。チキン GATA1 において、p300 によって最も強くアセチル化されるのは、C 末端側の Lys218 と Lys220 (KGKK) である。アセチル化された GATA1 は DNA 結合活性が増大する。NIH3T3 細胞では、p300 との共発現によって GATA1 の転写活性が増進される。p300 の HAT ドメインに変異を挿入すると、転写活性が減少する。同様に、チキン GATA1 のアセチル化 Lys 残基 (Lys151、Lys152、Lys158) に変異を挿入すると、赤血球分化能が抑制される。しかし、野生型と変異型 GATA1 の発現量および DNA 結合活性に差はない。このことは、GATA1 のアセチル化は他の要因を介して転写活性に影響を与えていることを示唆する。

Acetylation by CBP

CBP (CREB-binding protein) は GATA1 の Zn finger に結合し、GATA1 をアセチル化して転写活性を増進する。マウス GATA1 において、CBP によって最も強くアセチル化されるのは Lys246 と Lys252 である。これらは K/RXKK 配列に一致しないが、チキン GATA1 でもアセチル化される (チキン Lys152、Lys158)。マウス GATA1 で最も強くアセチル化されるのは C 末端側の Lys312 (KGKK) である (チキン Lys218)。しかし、in vitro では GATA1 (K312A) も CBP によって野生型と同程度にアセチル化される (近傍の Lys 残基が代わりにアセチル化されている?)。したがって、CBP による特異的なアセチル化は別の部位である可能性もある。

E1A は CBP をブロックする形で GATA1 のアセチル化を抑制し、赤血球分化を妨げる。

COS-1 細胞では、GATA1 がアセチル化されても、また、GATA1 のアセチル化サイトを置換・削除しても、GATA1 の DNA 結合活性に変化は見られない。アセチル化サイトに変異を挿入された GATA1 も、核に局在する。

NIH3T3 細胞で 野生型および変異 GATA1 と CBP を共発現させると、C 末端側アセチル化サイトに変異を持つ GATA1 の活性だけが上昇しない。また、C 末端側アセチル化サイトの変異は、CBP との結合および CBP への反応を減少させる。したがって、GATA1 の活性化には C 末端側サイトのアセチル化が重要である。

HAT ドメインに変異を挿入し、アセチル化能を喪失した CBP も、野生型 CBP と同程度に GATA1 を活性化する。

p/CAF

p300/CBP と共同してヒストンをアセチル化する p/CAF は GATA1 をアセチル化しない。

Cofactors of GATA1

References

Boyes J, Byfield P, Nakatani Y, Ogryzko V. Regulation of activity of the transcription factor GATA-1 by acetylation. Nature. 1998; 396: 594-8.

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Dai YS, Markham BE. p300 Functions as a coactivator of transcription factor GATA-4. J Biol Chem. 2001; 276: 37178-85.

Pikkarainen S, Tokola H, Kerkel R, Ruskoaho H. GATA transcription factors in the developing and adult heart. Cardiovasc Res. 2004; 63: 196-207.