- OLETF ラット

OLETF Rat As a Model of Type II Diabetes

OLETF ラットは closed colony の Long-Evans ラットから開発された、II型糖尿病 (type II diabetes) のモデル動物。多飲、多食、肥満、糖尿などの病態を有する。主な特徴は以下の通り。

  1. 雄 OLETF ラットは、25週齢の OGTT においてほぼ全例が糖尿病と診断される。
  2. 雌 OLETF ラットは、60週齢でも約 30% の個体しか糖尿病を発症しない。
  3. →OLETF ラットの糖尿病発症には性ホルモンが関与している。
  4. 8週齢以後、血漿インスリン値は LETO ラットよりも高値を示し、高インスリン血症となる。
  5. 60週齢以後、血漿インスリン値は LETO ラットよりも低値を示し、最終的に低インスリン血症となる。
  6. 12週齢以後、グルコースに対する特異的なインスリン分泌不全と、抹消組織におけるインスリン抵抗性 (insulin resistance) が認められる。
  7. 若週齢もしくは糖尿病発症直後に食餌制限や運動負荷を行うと、糖尿病の発症遅延や改善が認められる。
  8. 25週齢の雄 OLETF ラットの膵ラ氏島は肥大し、繊維組織によって小さく分断されている。
  9. 60週齢では、膵ラ氏島は萎縮・消失しており、インスリン顆粒を認める膵β細胞の数が極端に減少。

OLETF ラットの糖尿病は、複数の遺伝子によって発症している。X 染色体に Odb1、第14番染色体に Odb2 がマッピングされた。これらの糖尿病発症遺伝子は共同で作用することによって、OGTT における血漿グルコース濃度を顕著に上昇させた。Odb2 の候補遺伝子は cholecystokinin A receptor (CCK-Ar)。

Plasma Triglycerol in OLETF Rat

OLETF ラットには高 FFA (free fatty acid; 遊離脂肪酸) 血症は認められないが、高 TG (triglycerol; トリグリセロール) 血症が、高血糖や高インスリン血症に先行して認められる。OLETF ラットでは、高 TG 血症に伴って膵ラ氏島に TG が蓄積し、インスリン分泌が低下している。インスリン分泌異常がまだ認められない 6週齢の OLETF ラットから単離した膵ラ氏島を TG とともに培養すると、TG は膵ラ氏島で顕著に蓄積された。OLETF ラットの膵ラ氏島には TG の取り込み異常が存在し、高 TG 血症が糖尿病発症原因の一つになっている。

II型糖尿病患者に抗 TG 薬を投与すると、インスリン感受性 (insulin sensitivity) が増加する。血中 TG 濃度は EPA (eicosapentaenoic acid; エイコサペンタエン酸) によって低下する。EPA はまた、内臓脂肪 (abdominal fat) の蓄積を抑制する。OLETF ラットに EPA を長期投与 (1.0 g/kgBW/day, 5-28th week) すると、血漿 TG、コレステロール (cholesterol)、リン脂質 (phospholipids) 濃度が低下する。また、肝臓 TG およびリン脂質濃度も低下する。さらに、内臓脂肪も減少する傾向がある。GIR 値と空腹時血漿 TG 濃度との間には相関関係があり、血中 TG 濃度が低下するとインスリン抵抗性が改善する。

References

  1. 平嶋司, 満志偉, 森茂人, 河野一弥. OLETF ラット. Diabetes Frontier 1998; 9: 477-480.
  2. 南麻子, 坂本貞一, 石村典子, 丹波保晴, 中屋豊. エイコサペンタエン酸は血中トリグリセライド濃度を低下させ内臓脂肪肥満ラットのインスリン抵抗性を改善する. 動脈硬化 2000; 27: 133-139.