- 細胞培養

細胞培養

培養液

細胞培養の至適 pH は 6.8 - 7.2 である。培養液にはフェノールレッドが加えられており、培養液が至適 pH から逸脱すると色が変化する。

赤紫色になる = アルカリに偏る
インキュベータ内の CO2 が適切に循環していない。インキュベーターの 0 補正は、ガスボンベの交換ごとに行う。フラスコのキャップを閉め過ぎても同じことが起こり得る。
黄色になる = 酸性に偏る
細胞がオーバーグロースした結果、乳酸などの代謝物が培養液中に溜まり、酸性になる。

グルタミンは溶液中で不安定なため、液体培地には添加されていない場合がある。注文、使用時に確認。4°C で 1ヶ月保存すると、約 30% のグルタミンが失活する。-20°C では半年ほど安定。

有機溶媒にしか溶けない物質を培地に添加する場合は、まず DMSO に溶かし、DMSO 溶液を培地に添加する。DMSO 濃度が 0.1 - 1% になるように調整する。

細胞の凍結・解凍

細胞を凍結保存するときには、1°C / 3 min の速度で徐々に凍結する。

凍結細胞を解凍するときは急速に解凍する。融解細胞の浮遊液は 10倍量の PBS で希釈して遠心する。ES 細胞の場合は、1 ml の培地を融解細胞の浮遊液に添加して 1分間静置、 その後 2 ml の培地を添加して 1分間静置、4 ml の培地を添加して 1分間静置……と、徐々にボリュームを増やしてから遠心する。

トリプシン処理

トリプシン活性は Ca2+/Mg2+ によって阻害される。培地中には Ca2+/Mg2+ 大量に存在するため、培養細胞を乖離させるにはトリプシン-EDTA 溶液を用いる。細胞によっては、トリプシン処理を行う前に PBS で Ca2+/Mg2+ を洗い流す場合もある。

血清にはトリプシン阻害剤、Ca2+/Mg2+ が含まれているので、血清培地を加えることによってトリプシン反応は停止する。

トリプシンは 4°C で 1ヶ月ほど安定。

ES 細胞

現在、マウス ES 細胞 (embryoninc stem cell) は、129SV 由来、C57/BL6 由来、DBA/1 由来の 3系統が市販されている。

ES 細胞を未分化の状態で維持するために、LIF (leukocyte inhibitory factor; 白血病阻害因子) を添加する。LIF は IL-6 (interleukin-6) ファミリーに属するサイトカインの一種で、最初に発見されたES 細胞の分化抑制因子である。LIF が、細胞膜上に存在する Liftβ/gp130 のヘテロダイマー受容体に結合すると、Stat3 が活性化され、分化が抑制される。

フィーダー細胞 (feeder cell) には、マイトマイシン C (mitomycin C; MMC) や γ 線照射によって増殖能を抑制した細胞を用いる。マウス胎児の繊維芽細胞 (mouse embryonic fibroblast; MEF)、STO や 3T3 をマイトマイシン C で処理する。