- MH: プロローグ

プロローグ

MH, MHP / MHG / MH2 / MHP2 / MHP2G / MH3 / MHP3

MH, MHP

後の世の者は、この荒々しくも眩しかった数世紀を振り返り、こう語る。
大地が、空が、そして何よりもそこに住まう人々が、
最も生きる力に満ち溢れていた時代であった、と。

世界は、今よりもはるかに単純にできていた。

すなわち、狩るか、狩られるか。

明日の糧を得るため、己の力量を試すため、
またあるいは富と名声を手にするため、人々はこの地に集う。

彼らの一様に熱っぽい、そして
いくばくかの憧憬を孕んだ視線の先にあるのは、
決して手の届かぬ紺碧の空を自由に駆け巡る、
力と生命の象徴——飛竜たち。

鋼鉄の剣の擦れる音、
大砲に篭められた火薬のにおいに包まれながら、彼らは
いつものように命を賭した戦いの場へと赴く——。

MHG

走れなくなった馬がやがてその命を失うように、人も歩みを止めては生きられない。
彼らは新たな道を、新たな力を求め、ただ黙々と足跡を刻む。
鉄の剛剣はより鋭く、天を睨む巨砲は更に重く、身を包む鎧はなお固く。

だが、それは彼らだけではない。

相向かうは天空の、砂漠の、そして密林の覇者たち。
盾をも徹す牙はより鋭く、空を裂く尾の一撃はさらに重く、砲弾すら弾く鱗はなお固く。
ほの白く煙る朝もやの向こう、道は交わる。荒ぶる鼓動と、迫る獲物の息づかい。
先へ行くか、ここで伏すのか。
遠く角笛の音が告げるは、火花散る死闘の始まり——。

MH2

一条の光が、雲を貫き大地を照らす。
にわかに遠雷が轟き、降り始めた雨が森の香を舞い上げる。気づけば、姿は目前にあった。
天を飲み込む嵐の下、逆巻く風のすぐ向こう、美しく荒ぶる絶対者。
そう、すでに両者は知っていた。
出会いが必然であることを。そして、間もなく彼らが分かたれることを。

狩人と、その獲物。どちらかが、どちらかに。

世界が未知で溢れていた時代。
辺境の空を飛竜が舞い、未踏の森林を牙獣が闘歩する。
その骨は、家屋を支える柱となって人の営みを見守り、
その皮は、風をはらむ帆となって船を新たなる海へ導いた。

やがて再び一条の光が、雲を貫き大地を照らす。
にわかに遠雷が轟き、降り始めた雨が森の香を舞い上げる。
そしてまだ見ぬ何かを求め、狩人は静かに歩を進めてゆく——。

MHP2

雪を踏みしめる音が、いやに高く聞こえた。
両目を焼く白一色の中、動くのはこの身ただひとつ。
しかし、気配は満ち満ちている。
大地が、空が、知覚が、直感が、声なき叫びを上げ続ける。
時は、目前に迫っている。

零下の世界。
凍える雪風の中、氷に閉ざされた山々の狭間にも、
しかし確かな鼓動が息づいていた。
それは例えば、細い火を囲む温かな笑顔たち。
それは例えば、洞穴に潜み獲物を待つ爪と牙。
極限で紡がれる命は、常に掛け値ないしなやかさを得る。

時は満ちた。
無慈悲な大気は淡々と震え、彼の者の咆哮を乗せてくる。
それは例えば、霊峰を統べる旧き暴君。
粗野ゆえに崇高なのその猛りは、時に他の命をも吹き消さんと荒れ狂う。

さあ。狩人たちよ、心せよ。静謐の世界が牙を剥く——。

その者は待つ。
いまだ朝靄の濃く煙る、色のない木々の大海で。
足音を潜め呼吸を殺す、心ない影の狩人。
ゆらり揺らぐ、紅の灯火は二つ。

その者は行く。
幾度も脳裏へめぐり来る、怖れと躊躇いを振りはらい。
得物を抜き低く構える、揺るぎない眼差しの狩人。
彼が奉ずるその剣の、儚い輝きは一つ。

彼らは感じる。
新たな獲物の訪れを、さらなる強敵の存在を。
己がうちに湧き起こる、抑えがたい鼓動の高鳴りを。
この先に続く、まだ見ぬ世界の広がりを。

そして、不意にきらめく光。
この日も変わらず訪れる、森の目覚めのその瞬間。
陽が射せば霧は溶け、空は青く、花は赤く、息づく緑はどこまでも深く。
囲むすべてに見守られ、持てるすべてをそこに懸け。
再び今、狩人たちは相対す——。

MH3

自らの命を懸け、山川草木と自在に心通わす者たちがいる。
地を走る獣に、海原を統べる竜に、
技と知恵を頼りに挑み続ける者たちがいる。
何が彼らを駆り立てるのか。何を彼らは求めているのか。
空は言葉を好まない。海は詩句では語らない。
知りたくば、ただ武器を取るがいい。
答えはいつも、そこにあるのだから。

MHP3

朝霧につつまれた山河は何も語らず
原始より続く、生命(いのち)の営みを見守る

紅葉に色づく木々は大地を彩り
高き太陽と共に、来訪者を迎え

黄昏に染まる廃屋は
閑寂のまま、自然の驚異を語る

月影が水面に佇む頃
やがて深緑の森の王は、梢の彼方より姿を現す

狩人は往く、本能に身を委ね、主たる誇りと力を示さんと
狩人は挑む、持てる全てを賭して、その本懐を遂げんと

獲物を見据え、地を駆ける狩人

交わりし雷光の行方は、ただ風のみぞ知る——