2012/09/19/Wed.線維芽細胞
線維芽細胞 fibroblast について考えていることを少し。
- 心臓は心筋細胞だけからできているのではない。同数以上の線維芽細胞を含む。梗塞などで心筋が脱落すると、線維芽細胞がその間隙を埋めるように増殖する。これが線維化 fibrosis である。
- 線維化は心機能を悪化させるといわれているが、そもそも心筋がなくなっているのだから、線維化が悪化の直接の原因かどうかは不明である。
- 同様の疑問として、線維化は、病的な状態に対する保護的な「抵抗」なのか、病的な状態による恒常性の「崩壊」なのかも不明である。
- 心筋が死ぬと線維芽細胞が増殖する正確な機序も不明である。
- 血管周囲の線維化と間質の線維化が微妙に異なったりもするんだよなあ。
- 同様の線維化は様々な組織不全で観察される。
- 心臓線維芽細胞の chromatin 修飾は、由来を同じくする心筋のそれと似ている。
- その結果、心臓線維芽由来 iPS 細胞は、他の組織の線維芽由来 iPS 細胞よりも、心筋に分化する効率が良いとされる。
- 膵臓の細胞などは ES 細胞から分化させるのが非常に困難だが、このような組織線維芽由来 iPS 細胞を用いることで突破口が開けるかもしれない。
- ということは……、一口に線維芽細胞といっても、各組織に存在する線維芽細胞は「別種の」細胞ということになる。
- 考えてみれば当たり前のことではある。が、線維芽細胞は組織の主要な役割を担う細胞ではなく、研究課題として人気もない上、医学部は臓器・疾患による縦割り組織なので、異なる種類の線維芽細胞が比較されることもない。
- この十年で脂肪細胞に対する認識が大きく変わったように、いずれ線維芽細胞の時代が来るような気もするのだが。
- 特に心臓では、線維芽細胞から心筋への形質転換を利用した心筋梗塞治療の論文が立て続けに発表されている。