- Program of Reprogramming

2008/12/20/Sat.Program of Reprogramming

単細胞生物を reprogram して培養細胞のようにできるのだろうか、とバカなことを考えた T です。こんばんは。

「検索して出てくる情報には価値がない」という、いささか極論的なドグマを認めてしまうとどうなるか。日記に書くことがなくなるんだよな。放っておいても皆が書くであろう主題について、今さら俺がこんなところで何かを述べても仕方がないというか。この日記で時事についてほとんど語らない理由もそのあたりにある。

研究日記

iPS 細胞を使って何をするのか。色々とアイデアは出されているが、基本的な路線は、「患者由来の iPS 細胞を再生医療に利用する」というものである。例えば、心筋梗塞の患者から体細胞を採取し、iPS 細胞へと reprogram した後、心血管前駆細胞に分化させ、それらを梗塞巣に移植して心血管の再生を促すということが考えられる。非常に遠大ではあるが。

「iPS 細胞を経なくとも、体細胞から前駆細胞に直接 reprogram したら良いんじゃね?」ということは少し考えれば誰でも思い付く。しかしこれは難しい。前駆細胞はいささか概念的な存在である。前駆細胞を定義するなら、「自己増殖しつつ、特定の細胞へとしか分化しない細胞」であるが、こんなものが生体内に本当にあるのかどうか——特に心臓のような基本的に増殖しない系において——、まことに疑わしい。

Nature に存在しなくとも、前駆細胞様の性質を持つ細胞を人工的に作出すれば良いじゃないか。医学系や工学系の人間はそんなことをいう。医療工学的な発想だよなあ。そんなことを生物学出身の俺は思ってしまうのだ。この種の葛藤については以前に少し書いた ("Nature v.s. Artifact")。

iPS 細胞を含む再生医療の研究は理念先行型である。一般的なイメージの応用研究は、「細胞の reprogramming の機構が基礎研究でわかったので、それを前駆細胞の作成に応用しよう」という順序である。それが理念先行型では、「前駆細胞が必要であり、その作成には細胞の reprogramming の知識が必要なので、基礎研究をしよう」となる。もちろん、興味の在り方が違うだけで、どちらがどうという話ではない。