- 国字、俺語

2007/11/29/Thu.国字、俺語

自分も共著者となっている論文が accept された T です。こんばんは。

ある時期以降の漢字は部首を合成することによって新たな字を生み出し、その数を増やしてきた。「たいと」はやり過ぎだとしても、二十一世紀の日本人である我々が新字を造っても別に構わないと思うのだが、コンピュータで文章を書くことが当たり前となってしまった現在ではそれも難しい。今や全く聞くこともなくなった「国字」という言葉がある。日本で造られた漢字のことである。「峠」「働」「襷」なんかが有名だ。もうこんな素敵な文字は生まれないのだろうか。

近頃の日本では外国語をそのままカタカナで書くことが多くなったが、外来語の翻訳は長い間、特に学問の分野では極めて重要な仕事であった。現在使われている自然科学および人文科学の基礎的な訳語の多くは明治期に作られた。中でも西周にしあまねが果たした役割は大きい。彼らの存在があったからこそ、日本人は日本語で世界を学ぶことができたし、今もできている。これは凄いことなのだ。母国語で最先端の教育ができる国は世界的に見ると驚くほど少ない。

ところで、日本で鍛え上げられた数々の用語が中国に輸出されていることはもっと知られても良いだろう。「科学」「哲学」など、明治の日本で作られた翻訳漢語の数々は中国の教育・研究分野でそのまま使われている。これにより中国は、自ら翻訳する手間を省きつつ母国語で近代西欧の学問を吸収することができるようになった。中国の近代化に日本語が大きく貢献していることはもっと誇っても良い。

もちろん中国から日本への輸入も多数ある。特に現代の日本は外来語の翻訳を疎かにしているから、新しい分野の魅力的な訳語には(カタカナを持たず漢字を使わざるを得ない)中国産のものが多い。「電脳」なんかはその最たる例だろう。とても印象的な言葉だ。

新字はともかく、漢字を組み合わせて新しい(そのくせ昔から存在しているように思える)造語を作るのは少し努力すれば達成できそうな課題である。そのような俺語が上手くできたらコッソリ日記に混ぜてみるのも面白いかもしれない。