- 免疫系と神経系

2007/05/16/Wed.免疫系と神経系

早寝早起きが続いている T です。こんばんは。

研究日記

大学 → 病院。

5月も半ばになってからで恐縮だが、今年度から助教授が「准教授」に、助手が「助教」へと、呼称が変わった。記録として書いておく。

Western で良い結果が出た。検出が難しくて、大学から 3種類の抗体を借りてきたのだが、その内の 1つが綺麗に反応した。ちなみにこの抗体は、大学ではうまく work しなかったらしい。今回のような事例は珍しくない。抗原の種によって最適な抗体のクローンは異なる。しかし、色々なクローンを試すには抗体の値段は高過ぎる。

今年度の抗体カタログを業者から頂いた。表紙には、掲載抗体 11万種類、とある。ヒトの遺伝子が約3万個だから、全てのタンパク質に対して抗体があるのか、といえばそうでもない。メジャーな抗原には複数のメーカーから複数の抗体が販売される一方、マイナーな抗原 (あるいは未知の抗原) に対する抗体は生産されない。だが、いずれ全ての遺伝子が解析されるはずであり、未知の遺伝子の中にも重要なものがまだまだ埋もれているはずである。抗体の種類は、さらに増えていくだろう。

抗原抗体反応に頼らず、特定のタンパク質を検出することはできるだろうか (もちろん、現在使われている系と同じくらいの簡便さと経済性で、という条件付き)。ちょっと無理だろうな。我々が抗体を手放すことになるとは考えにくい。免疫というシステムが凄いのは、いつ現れるかわからない未知の抗原にも対応できるようになっているからである。この系が、ゲノムという物理的に有限な空間上に構成されている。

また、個体が歩んできた免疫の歴史は、個体の中に記憶・記録される。既知の現象にも未知の現象にもある程度の対応ができるわけだ。その意味で、免疫系は中枢神経系と似ている。多様性 (diversity) という言葉は普通、生物種のそれに対して使われるが、個体レベルの多様性を実現するのが免疫系と神経系である。これらは後天的に変化する。遺伝情報が同一である一卵性双生児のそれぞれが「別人」であるのは、それ故といえよう。