- 普遍の価値

2006/04/27/Thu.普遍の価値

それがなぜ価値を持つのかを理解するのは難しいと思う T です。こんばんは。

小噺

「なぜ山を登るのですか?」
「理由は山ほどある」

研究日記

病院 → 大学。病院ではタンパク質の免疫沈降。大学では細胞の免疫染色。最初に断っておくのを忘れたが、ここに箇条書きしているのは、実際に俺自身が手を動かした実験のみである。その他に、テクニシャン嬢 2人に実験の指示を出したり、事務的な仕事もあったりするのだが、それは毎日のことなので省略する。

現在の生物学が、その記述において他の基礎科学と大きく異なっている点は、図版を多用することであろう。実際、イラストがなければ理解できない現象や概念が多い。数学や物理、化学は圧倒的に記号 (これも一種の言語だ) の世界である。記号によって表現される宇宙は、すなわち抽象性、一般性、普遍性が高く、高尚であるというイメージも強い。

自然科学において、「原理原則はシンプルだ」という指向性は、ほとんど神話的といっても良いほどの響きを持つが、実際にそうであるという保証は何もない。この命題が真であることを経験的に我々は知っているが、それとて、そう思い込んだ人類が「シンプルになるように」科学的体系を築き上げたという疑惑までは否定できない。生物学の大きなテーマに、「多様性に潜む一般法則の発見」があるけれども、本当にそんなものが隠されているかどうか、頭の片隅で疑っていないと思わぬドツボにハマり込む可能性がある。メカニズムが違うから結果も違う、という方がよほど自然なのだ。そこから出発しているからこそ、普遍性が価値を持つ。誤ってはならない。