- 肥満と脂肪 (1)

2005/06/30/Thu.肥満と脂肪 (1)

BMI (body mass index; 体格指数) では「普通」に分類される T です。こんばんは。

昨日の日記で、ちらっと肥満 (obesity) について述べた。仕事の勉強も兼ねて、しばらく肥満や脂肪について書いてみようと思う。まァ、不定期連載ということで。

肥満と脂肪組織

肥満の原因は脂肪組織 (adipose tissue) の肥大にある。脂肪組織は脂肪細胞 (adipocyto) からなる。脂肪組織が大きくなるというのは、脂肪細胞の数が増えるケースと、一つ一つの脂肪細胞が肥大するケースがある。また、一口に脂肪組織というが、皮下脂肪 (subcutaneous fat) と内臓脂肪 (abdominal fat) の 2種類に大別される。内臓脂肪は主に腸間膜に沈着する。

女性の身体が丸くて柔らかいのは、男性に比べて皮下脂肪が豊富にあるから、ということはよく知られている。一方、腹だけがやけに膨れるという、いわゆる「中年太り」は、内臓脂肪の沈着が進行している場合が多い。このように、肥満は決して一義的な症状ではない。であるから、「誰でも痩せられるダイエット」というものも存在しない。ダイエット産業や、若い女性によく見られるファッションとしてのダイエットを否定するつもりはないが、真剣に悩んでいて本気で痩せたいと願っているならば、病院に行った方が良い。

肥満の環境要因と遺伝的要因

肥満自体は決して病気ではない。寒冷地に生息する動物、例えばシロクマやアザラシがあれだけ大きいのは、大量の皮下脂肪を蓄えているからであり、そこには「熱源と栄養源を体内に確保する」という立派な理由がある。肥満は後天的な環境要因(過食、運動不足など)によって発症すると思われがちだが、遺伝的要因も無視できない。仮に、極地で「痩せたアザラシ」が生まれたとしても、その個体は生き残れないだろう。そのためアザラシは、皮下脂肪をせっせと蓄えるような遺伝的プログラムを恐らく持っている。アザラシを動物園に連れてきても痩せないしな。彼らは太るべくして太っている。つまり「太る家系」であるわけだ。それが遺伝的ということ。

したがって、「太っている人間は自己管理ができていない」というアメリカ式の人物評価は、そこはかとない危険性を孕んでいる。遺伝子差別である可能性は絶無ではない。「痩せられない人間」は遺伝学的に存在する。人の上に立つ方は覚えておかれると良いだろう。そのうち「ジェネハラ」(genetic harassment; 遺伝的嫌がらせ)という言葉ができるかもしれない。というか、既にアルコール・ハラスメントがそうだよな。あれは、アルコール分解酵素の遺伝子を持つ人間の、遺伝子を持たない人間に対する遺伝子差別という捉え方もできる。怖い時代になったものだ。

覚書

さて、今日は割と肥満について擁護したが、肥満が身体に良くないことは事実である。次回は、肥満の何が問題なのかということについて書こうと思う。