なかなか進路が決まらないせいか、ついつい「科学とは何ぞや」と考えてしまう T です。こんばんは。
実験の合間にネットをブラブラ。あるところで「タンパク質の結晶は全てアーティファクトではないのか」という議論を見かけた。俺はタンパク質結晶に関しては素人だが、この質問に誠意をもって答えようとするならば、恐らく回答は「アーティファクトである」になるんじゃないかと想像する。問題は、それがアーティファクトとして、果たしてその結果に科学的な意味があるのだろうか、ということである。
難しい設問だが、個人的には「意味がある」と答えたい。
数学には「虚数」という数があり、これも一種の人工的な概念、アーティファクトだと言える。しかしこの虚数は、我々が存在する宇宙の因果律を、我々が理解できる形で示すためには必要な数である。
「何のために学問をするのか」という巨大な哲学的命題にも関係するのだが、要するに「我々が宇宙を理解するため」に学問は発展してきたんだと思う。その根源には、「我々は何であるか」という深い疑問が横たわっている。全ての学問は、この疑問に答えるためのアーティファクトではなかろうか。
話がデカくなり過ぎてしまった。冒頭のタンパク質結晶に話を戻すと、「アーティファクト」の構造から既知の生命現象が上手く説明でき、かつ既存の説明体系と矛盾を起こさないなら、そのアーティファクトの解析結果には科学的な意味があり、学問として充分有効だと俺は思う。
まぁ、アーティファクトにも色んなレベルがあるけれど。非特異性に代表されるような、嘘のアーティファクトはいらない。必要なのは、真実を説明する「事実としてのアーティファクト」である。