- ポータルサイト論 (2)

2004/11/15/Mon.ポータルサイト論 (2)

ベランダにゴミ袋を三つも溜めている T です。こんばんは。

Web 日記

「ポータルサイト論」のイントロダクションに代えて、ネットワーク端末の話をする。一昔前、来るべきコンピューティング環境として、ネットワーク端末が熱く語られていた。高性能のサーバにつながった、一連の軽い端末からなる系である。端末にはソフトウェアどころか、OS すら搭載されていない。どうするのかというと、立ち上げられた端末は、起動時にサーバから OS を読み込むのである。で、例えば端末にある画像ファイルを処理したいとする。今度はグラフィックソフトもサーバから読み込む。ソフトウェアはサーバで一元管理され、手元の端末にあるのはデータのみ、というシステムである。

これにどういうメリットがあるのか。ウイルス騒ぎでもわかるように、大規模な組織で使われている何百台のマシンの一つ一つにパッチを当てるには、膨大な時間とコストがかかる。OS やアプリケーションのインストールやアップデートも大仕事だ。しかしネットワーク端末の系ならば、サーバにあるソフトウェアを更新するだけで、全ての端末が最新の環境を利用できることになる。

まさに良いこと尽くしだが、ちょっと考えただけでも「OS のダウンロード」など無理だろうと思ってしまう。もっとも、この構想はネットバブル期に語られていたもので、ネットワークの通信状況も数年で劇的に向上するだろうという希望に基づいた、非常に楽観的なモデルではある。

さて、実際にはどうなったのか。それが今日のテーマ。

サイトのポータル化 (3)

昨日までは「自サイトの」ポータル化の話だったが、Yahoo! に代表されるポータルサイト・サービスの利用とは何が違うのかを考えてみる。

例えばメール。メールソフトを使わずとも、ポータルサイトのメールサービスはブラウザだけで完結する。とはいえ、無料サービスの多くはメールボックスの容量が貧弱であり、ほとんどの人が自分のマシンのメールソフトでも受信(=コピーのダウンロード)をしてきたと思う。ところが今年になって、Google が容量 1 GB のメールサービス「Gmail」を開始した。現時点での常識的なメールのサイズを考えると、一生分のメールを溜め込むには充分過ぎる容量であると言える。つまり、メールソフトがなくても困らなくなるのだ。

同じことがスケジュール管理や Blog についても言える。Gmail の登場以降、各ポータルサイトでのサービスの充実競争(主にレジストリ容量の拡大)が激化した。俺が利用している Yahoo! のメールボックスは、この 1年で 50 MB から 2 GB へと激増、実に 40倍である。今年日本でも大ブレイクした Blog だが、これはアメリカのブームが上陸したのではなく、サービス競争による企業側の猛アプローチが火をつけたという文脈で俺は見ている。

全てのサービスに共通しているのが、「ユーザのローカルデータを、いかにしてサービスを提供しているサーバに取り込むか」という目的意識である。言うまでもないことだが、情報は金になる。例えば Blog なんかでは、個人の嗜好が比較的ストレートに書かれたりする。「カテゴリー」などの分類は、その際たるものだ。これを利用すれば、効率の良いダイレクトメールの発送が可能だ。Yahoo! でも Google でも、その収益の大半は広告からなっている。そういう仕組みなのだ。

ポータルサイト・サービスの問題点

真に無料のサービスなどなく、ましてやそれで儲かるなんて。どこかにカラクリがあり、利用には必ず代償がつきものであることなど、常識的に考えればわかるはずだ。それを知った上で利用する分には、大変便利なサービスである。

問題なのは技術的な基盤である。サービスを提供するソフトウェアがブラウザで完結するところなどは、ネットワーク端末に似ている。逆に全く異なる点は、データまでもがサーバ側に格納されているということだ。

ローカルからデータを手放していった挙げ句、サーバが吹っ飛んだらどうするの?という危惧がある。そこには貴重な情報もあろう。何より、ローカルのハードディスクが壊れるのは自分の責任だが、ポータルサイトサービスはそうではない。ただの一企業がやっているのだ。一度、データの保証に関する規約に目を通しておいた方が良い。消えてなくなってしまってからでは遅い。

データのみならず、その管理までを委ねるかどうか。俺が Blog に興味を持ちつつ最終的に移行しなかったのは、そういう理由もある。そりゃあ Blog だってローカルにダウンロードもできるが、そんな面倒なことをしないのは始める前からわかっている。アップロードは、そうしないとネットで利用できないからやるのであって、そこがバックアップだけを目的としたダウンロードとは違う。大切なことだと知りながらもバックアップに熱心でないのは、何も俺ばかりではないだろう。

「ハードディスクの外部展開」という文脈で考えるならば、「自サイトのポータル化」とは、実はバックアップも兼ねている優れた方向性であると言えないこともない。サーバは「外付けハードディスク」というわけ。問題点は、ローカル利用とネット利用でのファイル形式の違い、そしてファイル管理の煩雑さだろう。ここらへんは、スクリプトを組んだりソフトウェアを使って、できるだけシームレスな環境を構築する必要がある。それが今の俺の課題だろうか。