- トゥームレイダーと現代の秘宝

2004/06/27/Sun.トゥームレイダーと現代の秘宝

『トゥームレイダー』
同名ゲームの映画化。ゲームはやったことがないが、ララという女性のトゥームレイダー(トレジャー・ハンターみたいなものか)が時を操る秘宝を求めて世界中を探検するアドベンチャー・アクション。

昨夜は映画『トゥームレイダー』を観た T です。こんばんは。

『トゥームレイダー』の中に、時間を操るトライアングルというものが登場する。それを手に入れた者は神に等しい力を得る。ま、よくある設定だわな。

ところで、俺は物理に関しては全くの素人で、それゆえに、時空間に関わる研究というのは高尚なものだろうと思い込んでいる。数学ができないというコンプレックスもあるので尚更だ。

テレポーテーション

最近のニュースで、「物質のテレポーテーションが実現した」というものがあった。

NIST の実験では、トラップと呼ばれる、金の電子とレーザー光で満たされた閉領域に 3つの原子を入れる。レーザー光は原子を活性化させ、スピンと呼ばれる量子特性を変更するのに用いられる。第1と第2の原子を、「もつれ」と呼ばれる特有の形で絡み合わせる。そしてこの関係を、第1と第3の原子のもつれにコピーする。すると第1と第3の原子のもつれは、第1と第2の原子のもつれと測定上全く同一になるので、第3の原子は第2の原子の性質を帯びる、という仕組みだ。

ということらしい。よく読んでみると、物質そのものが移動したわけではない。強いて言えば、「瞬間移動」ではなく「瞬間複製」に近い。出来上がりは同じでも、材料が違うわけだ。発想としては DNA の複製に近いか。まずは鋳型が必要なのだ。

俺だけが俺の時を未確認

まさに目からウロコだが、瞬間移動より瞬間複製の方がよほど簡単なことに気付く。瞬間複製ができれば、それは「見かけの瞬間移動」になり得る。それが物質の特性を移すだけでできるというわけだ。

人間の身体を構成する原子は、およそ 8年間で全て入れ替わるという。つまり、「同じモノ」であるために「全く同一の原子」で構成される必要はない。炭素原子は、地球のだろうが太陽のだろうが炭素原子だ。重要なのは種類と、その組み合わせ方である。そういう情報をコピーできれば、複製は難しくない。

原理的に言えば、俺の身体を構成する全原子の座標を測定して、同種の原子を相同の座標に寄せ集めれば、もう一人の「俺」ができる。これを瞬間的にすれば「瞬間複製」となる。さらに、オリジナルの俺を消滅させると「瞬間移動」になる。

あれ、これってどこかで見たような話だな。そう思って本棚をひっくり返したら、何と鈴木光司の『ループ』で出てきているではないか。『ループ』での瞬間複製はコンピュータ上の話なんだが、アイデアは同じである。情報さえ複製できれば、実際にモノを組み立てなくても良いので、再構成の際の技術的な障壁はグンと低くなる。引用したニュースでも、この現象は量子コンピュータの開発に有用と書いてたし。

次世代トレジャー・ハンター

時間を操るであるとか、空間を支配するであるとか、そういった力は「秘宝」でも登場させないと話にならなかった。だからトレジャー・ハンターが、洞窟や密林などを冒険するゲームが作られてきた。しかし、サイエンスがここまで来ると、そのような力は「秘宝」が納められている洞窟にではなく、研究所の中にあると言った方が、リアリティがありはしないか。ということで、新しい企画を立ててみる。

数千年前から対立していた光と闇の勢力。彼等は時を操る力を手に入れるべく、長い抗争の歴史を歩んできた。いつしか、光の勢力は闇の勢力に壊滅寸前まで追い込まれていた。世界中の情報を操る闇の勢力は「時の力」の入手まで、あと一歩に迫っていた。そんなとき、光の勢力に救世主が誕生する。それがキミだ。闇の勢力に「時の力」を渡してはならない。一刻も早く XX大学に潜入し、時の力を手に入れろ! セキュリティ・システムを潜り抜け、警備員を倒し、パスワードを駆使してコンピュータにアクセスするのだ! 新感覚アドベンチャー『トレジャー・ハンター LABORATORY』。数千年の歴史にピリオドを打て!!

ま、ロマンはないわな。