- The condition of genius

2003/10/18/Sat.The condition of genius

昨日アップした表紙画像はルネ・マグリットの "La condition humaine"(人間の条件)という作品を 3D で再現しようとしたものだが、完全には(特にパース)再現できてはいない。これは俺の腕の未熟さもあるが、それ以前に絵画特有の「二次元の嘘」とでもいうべき問題があるからだ。

ある種の絵画や、特に昨今の 3D CG が、その手法で写実性を追及することに意味があるのか、と思うことがある。いくらリアルにしたところでカメラやビデオに敵うわけがない。であるから、芸術としてはそこに写実性プラス・アルファがなければいけないと思うわけだ。そういう意味で、あり得ないものを徹底して写実的に描くというシュール・リアリズムの考え方は非常に面白い。

俺が好きなマグリットやダリ、エッシャーなどが(一括りにするのは乱暴だが)活躍した時代に 3D CG というものがあれば、更なる傑作が生まれたのではないかと夢想する。まあ、芸術家というものは時代を先取らねばならないものだが。

分野を飛び越えて時代を先取る者のことを、これ天才という。否、先取る、などという生易しいものではない。彼等には未来が見えているのである。俺は前からピカソがキュビズムで描くところの顔の絵から、実は彼がアインシュタインの相対性理論を知っていたのではないかと疑っている。ピカソの顔の絵は、モデルを右顔から観察しながら、見えるわけがない裏側の左顔までがキャンバスに展開して描かれてある。

ところで、相対性理論によれば亜光速(光速以上だったか? 物理には暗いのでそのへんは勘弁願いたい)で移動すると、物体の表側だけではなく、空間の歪みから裏側までが同時に見えるという。その光景を表したイラストを目にしたことがあるのだが、それは全くピカソの描く顔の絵と同じ構造であった!

ピカソの目には光速の世界が映っていたとしか俺には思えない。こういうのを天才というのだなあ、としみじみ思ったという昔話。