- 間違い電話、それは両方向性悲劇

2003/07/30/Wed.間違い電話、それは両方向性悲劇

明日は講義とキノコ論文のディスカッション。眠いぞ。日本語が読みたい。

1ヶ月ほど前の話で恐縮だが、こんなことがあった。確か日曜日の昼頃だったと思うが、我が豪邸の固定電話が鳴った。珍しいことである。この電話を鳴らすのは母上と相場が決まっているので、俺は居住まいを正し、電話の正面に正座して受話器を取った。一瞬の間を置いてから、舌足らずな声が流れてくる。

「もしもし、アヤカちゃんいますか?」

は? てなもんである。勿論間違い電話なのだが、数年間どっぷりと携帯電話での連絡(まず間違い電話はない)に慣れてしまっていた俺は中々気付けなかった。しばらくの後、間違い電話であることに気付いた俺は、妙に気恥ずかしくなってしまった。いや、何と言うか、こっちが謝りたい気分になったのだ。

女の子の声は純粋そのもの。ちょっと緊張気味なのは、アヤカちゃんじゃなくてオジさんやオバさんが出たら何て言ったら良いんだろう、と不安だったのかな? でも折角の日曜日だから遊びたかったんだよね? 頑張って自分で電話してみたんだよね?

スマン! こんな薄汚いオッサンが出てしまって!!

俺は非常に申し訳ない気持ちになってしまい、どうすれば傷つけずに間違い電話であることを伝るべきかに困ってしまった。

「ああ。ゴメンね。ここはアヤカちゃんのお家じゃないんだよ。もう一回電話番号をよく見てかけ直してごらん」

書いていて気持ち悪いが、およそ上記のようなことを喋ったと記憶している。それにしても「ゴメンね」って、何で俺が謝っているのか。しかし彼女の声には、こちらの膝を折らすような神々しさがあったってことだ。

「……」

女の子は黙っている。そりゃあそうだ。俺が電話に出る直前まで、彼女の心は「アヤカちゃんいるかな?」「オジさんやオバさんが出たらちゃんと喋れるかな?」という不安で一杯だったはずである。それが思いもかけない間違い電話。青天の霹靂だ。5歳やそこら(話し方や声の感じがそれくらいだった)の女の子が即座に返事ができないのも無理はない。

ホンマごめん、俺で。

受話器のコードで首を括りたくなったよ。