- Diary 2003/07

2003/07/31/Thu.

以前から気になって夜も眠れなかった問題がある。どうして主に苗字でのみ呼ばれる作家、名前でのみ呼ばれる作家、フルネームでのみ呼ばれる作家の 3種類がいるのか。例えば「日本の文豪 - 漱石、芥川、三島」というタイトルはあり得ても「日本の文豪 - 夏目、龍之介、由紀夫」という表記はないだろう。どうして夏目漱石は「漱石」で芥川龍之介は「芥川」なのか。以下は具体例。

主に苗字で呼ばれる作家
芥川龍之介、太宰治、三島由紀夫、川端康成、筒井康隆、横溝正史、など。
主に名前で呼ばれる作家
夏目漱石、森鴎外、江戸川乱歩、松本清張、など。
主にフルネームで呼ばれる作家
田山花袋、安部公房、小松左京、赤川次郎、西村京太郎、など。

まあ、個人的な感覚ではあるが、概ねこのような具合だ。勿論、作家に限らず他の分野でも起こっていることなんだろうが。何なのだろうか。

2003/07/30/Wed.

明日は講義とキノコ論文のディスカッション。眠いぞ。日本語が読みたい。

1ヶ月ほど前の話で恐縮だが、こんなことがあった。確か日曜日の昼頃だったと思うが、我が豪邸の固定電話が鳴った。珍しいことである。この電話を鳴らすのは母上と相場が決まっているので、俺は居住まいを正し、電話の正面に正座して受話器を取った。一瞬の間を置いてから、舌足らずな声が流れてくる。

「もしもし、アヤカちゃんいますか?」

は? てなもんである。勿論間違い電話なのだが、数年間どっぷりと携帯電話での連絡(まず間違い電話はない)に慣れてしまっていた俺は中々気付けなかった。しばらくの後、間違い電話であることに気付いた俺は、妙に気恥ずかしくなってしまった。いや、何と言うか、こっちが謝りたい気分になったのだ。

女の子の声は純粋そのもの。ちょっと緊張気味なのは、アヤカちゃんじゃなくてオジさんやオバさんが出たら何て言ったら良いんだろう、と不安だったのかな? でも折角の日曜日だから遊びたかったんだよね? 頑張って自分で電話してみたんだよね?

スマン! こんな薄汚いオッサンが出てしまって!!

俺は非常に申し訳ない気持ちになってしまい、どうすれば傷つけずに間違い電話であることを伝るべきかに困ってしまった。

「ああ。ゴメンね。ここはアヤカちゃんのお家じゃないんだよ。もう一回電話番号をよく見てかけ直してごらん」

書いていて気持ち悪いが、およそ上記のようなことを喋ったと記憶している。それにしても「ゴメンね」って、何で俺が謝っているのか。しかし彼女の声には、こちらの膝を折らすような神々しさがあったってことだ。

「……」

女の子は黙っている。そりゃあそうだ。俺が電話に出る直前まで、彼女の心は「アヤカちゃんいるかな?」「オジさんやオバさんが出たらちゃんと喋れるかな?」という不安で一杯だったはずである。それが思いもかけない間違い電話。青天の霹靂だ。5歳やそこら(話し方や声の感じがそれくらいだった)の女の子が即座に返事ができないのも無理はない。

ホンマごめん、俺で。

受話器のコードで首を括りたくなったよ。

2003/07/29/Tue.

今日は A氏の D論発表。お疲れさまでした。ついに A氏のスーツ姿を拝見。実に良い。もうコレだけで飯3杯は食えるな、という。

禁煙失敗の俺を迎えたのは、N.N.嬢の「やっぱり」という強烈な一語。ヘコんだ俺を A氏は「俺も禁煙失敗したことあるし」と優しく迎えてくれた。と思ったが、A氏の禁煙期間は 1ヶ月との由。その差、約 4倍。再びヘコむ。

2003/07/28/Mon.

禁煙するぞ!

8日後……

吸ってしもた……

ごめんなさいゴメンナサイ御免なさい……

約束通り、8日分の禁煙貯金 2,000円は近くのコンビニの募金箱にでも投じてきます。今後は減煙 > 禁煙という方向性で引き続き頑張っていこうと思います。煙草、やっぱ美味しいです。

本日の写真は 1週間前にヒゲマン氏に撮影して頂いたもの。自分のデジカメで撮った写真の最初の利用がコレかよ、情けねえ。

2003/07/27/Sun.

眠れなくて夜明け前に近所の公園へ散歩に行く。缶コーヒーを片手にベンチに座り、色々と考え事なんかしていたわけだが、駄目だね、やっぱり煙草がないと。ただボンヤリしているだけでも、意味あり気に「フーッ」と紫煙を吐いたりすると「アラ、何を考えているのかしら。渋いわね」というふうにも見えるんだろうが、煙草がないと、どんなに深遠な問題を一生懸命考えてたとしても、ボーッとしているようにしか見えない。何か損した気分だ。

といっても明け方の公園なんかに、俺を見ている人間もいないのだが。

蚊に身体を蝕まれたので帰る。煙草って蚊よけにもなるんだよなあ。やっぱ損した気分。

2003/07/26/Sat.

今日は長いよ。

社会通念上「できて当然のこと」でも、人によっては甚大なる苦痛や努力が伴うことがある。俺の場合だと団体行動が非常に苦痛で、できうる限り断ってはいるのだが、中には参加せざるを得ないことがある。これまで断れば社会的落後者という一線があるわけだ。誰にもあろう。学校や会社は大好きでバリバリと働く人が、家庭生活は全く苦手ということもあるし、その逆もあるだろう。

人を評価するとき「性格」云々とよく言うが、その性格の中にも、天性のものと努力によって達成されているものがあると心得るべきだ、と俺は考える。

で、思い出されるのが武田信玄と上杉謙信。この 2人、非常に興味深くて俺は大好きなのだ。

信玄は戦争も強いし治世者としても一級、まさに戦国大名の鏡と評されることが多いのだが、これはどうかね。いや、正しい評価なんだろうが、俺はこの結果は信玄の努力によるものだと思う。彼は本質的には怠惰な、少なくとも怠惰にしている方が好きな人間だったという印象がある。

若い頃から信玄は、酒好き女好きの享楽者的な一面がある。諸兄よ、よく考えてみたまえ。戦国最強と言われ、信玄が長生きしたら信長など木端微塵と評された武田騎馬軍団が、信玄生存中に完全支配下に置いていたのは甲斐・信濃・駿河の三国だけ。毛利や北条の方がよっぽど領国が広い。

やっぱこの人、領国経営とか面倒臭かったんだろうなあ、と思うわけですよ。支配下の地域には厚い施政を施して領民の評価も高いのだが、領国が増えたらまた色々とやらなあかんし、と思っていたんじゃないのか、と勝手に忖度してしまう。酒飲んで、姉ちゃんの乳を揉んでいた方が良いという。でも大名なんだから自分の国はちゃんとせなアカン、と。ここが信玄の努力ではないか。逆に領国経営さえ文句なくやっていれば、大名なんだし酒も姉ちゃんもドンと来い。で、本質的には大名の地位が好き。

対照的なのが謙信で、この人、若くして長尾家の当主になったんだが「家臣が言うこと聞かないから大名やめたい」といって寺に逃げる。小学生か、お前は。大名やりたくないんだよ、この人。しかも非常に禁欲的で、女なんかにも興味がない。何が好きかと言えば戦争。戦のために大名として生きる。本当は魔法使いになりたんだけど、という危ないオッサン。

だから領国経営どころか、領地を増やそうという了見すらない。信玄に追い出された信濃の村上義清が「信玄ぶっ殺してくれ」と泣きついてきたら「よっしゃ」と立ち上がる。別に信濃を支配したいわけではない。信玄と戦がしたいだけ。で、雪が解けるのを待ち、山を越えてやってくる。ほとんど季節の風物詩。ビジョンがない。

怠惰な信玄にしたらたまらんかっただろうな。また謙信が来るんかよ、面倒臭え。しかし彼は努力家だから信濃のために立ち上がる。信玄も別に越後が欲しいわけではない。だからずっと川中島で小競り合いをやっている。実態は実に不毛。

同じことを関東でもやる。この人、越後に住んでるくせに関東管領で、例えば小田氏治なんかが「北条ぶっ殺してくれ」と泣きついてきたら「よっしゃ」と立ち上がる。別に関東を支配したいわけではない。小田原城を攻めたいだけ。で、雪が解けるのを待ち、山を越えてやってくる。ほとんど季節の風物詩。ビジョンがない。

北条にしたらたまらんかっただろうな。また謙信が来るんかよ、面倒臭え。しかし彼等には小田原城があるから篭城する。北条も別に謙信と雌雄を決したいわけではない。だからずっと城にこもり、ひたすら飽きた謙信が帰るのを待つ。実態は実に不毛。

北条の圧力に屈していた関東の弱小大名は、謙信が来たら一斉に上杉になびくのだが、謙信は飽きたら帰ってしまう。すると北条が「お前らエエ加減にせえよコラ」と怒るので、再び北条の支配下に入る。結局、謙信の領土はいつまでたっても増えない。本人に増やすつもりもない。

面白いよなあ、と思う。信玄は責務を果たした分、精一杯遊ぶという感じ。でも残業はしない。謙信は責務を果たしているようで実態は遊んでいるという。どちらが良いとかは問題ではない。2人とも後世に巨大な名を残しているわけで、どっちも人生の達人だったんだなあというのが俺の感想。ま、2人の人物論も俺の独断的な印象で語っているわけで、そこから教訓も糞もないだろうが。

長くなり過ぎた。この手の文章は書いてて楽しいからなあ。いっそのこと「Special」でやるか。印象批評・戦国大名列伝。伊達政宗とか大好きなんだが。

2003/07/25/Fri.

キノコの論文わかんねえよ。リファレンスの論文をネットから落としてチラッと見たけど、余計にわかんねえ。よく考えたらレビュー読んでもわかんねえのに、ごりごりの専門論文が理解できるはずもない。ライフサイクルが理解できてないのに、その遺伝学がわかるわけもない。

結局、今日も一日我が豪邸で論文を読んでいた。というのも半分言い逃れで、半分は登校拒否に近い。ラボが嫌というわけではなく、我が豪邸から出たくないという感じ。引きこもりかね。

引きこもってるにも関わらず、頭髪がごっそり抜けるかと思うほど腹立たしいことがあった。怒っても仕方がないと諦めているので我慢する。ケツの穴でかいね、俺は。ガバガバだよ。

アメリカで出た腹が引っ込まない。煙草を止めて口が寂しいのか、過食症?っていうくらいに食ってるので引っ込むわけがない。というかさらに出るし。引きこもりでハゲでデブでケツの穴がガバガバか。終わったな、俺も。

2003/07/24/Thu.

早起きして朝イチ講義の準備。糞爺の昔話(しかも自慢。おまけに糞英語)のために何でここまでして、と思うが単位のためなので仕様がない。はっきりいって「単位のため」に講義を受けるってのは教養科目の糞講義並の糞モチベーションなんだが。とても大学院の講義とは思えない。

糞講義後、通夜のような糞ティータイム。その後、来週ラボで行くビアガーデンの予約という、これまた糞雑用なんかをする。誰が行きたがってるのか。雨降って中止にならんかいな。

午後から例の菌類のレビューを読もうと思って図書館に向かうと「休館」の文字が。何でやねん。もう夏休み気取りかよ、糞が。そのまま直帰して我が豪邸で読破しようとしたが、勿論そんな気になれるはずもなく。昼寝。糞。このイライラは禁煙のせいだと思いたいのだが。

夏休み気取りで思い出したが、来年の夏までに就職が決まらなかったら、学生としてのまともな夏休みは今年で最後なわけで。去年は学会とバイトと院試で終わったからなあ。そんな貴重な夏を、何も実験して過ごさんでも、と思ってしまうのは人情か、果たして怠惰なだけなのか。

色々と馬鹿馬鹿しい。禁煙してるのが阿呆臭くなってきた。

2003/07/23/Wed.

結局、今日はラボに行かずじまい。サボった人間が言うのもなんだが、とてもじゃないが実験なんかしている場合ではない。明日の講義の準備(例の英文伝記)はともかく、別の講義で今月中に読まなければいけない論文があり、ずっとこれにかかりきりだったのだが、読んでも全然わからねえ。

問題なのは、我が学科随一の癒し系教授・K田先生が書かれた review を読み、当の K田先生とディスカッションする、という課題。その review が「菌類の性決定」についてなのだが、やばいくらいに理解できん。そもそも高校の頃から菌類は苦手。おいおい、なんで単数体になったり倍数体になったりするねん。は? 性決定? 下等生物が偉そうにしてんじゃねえよ!

冗談はともかく、日本語の総説を引っ張ってきてレポートを書いて誤魔化すというわけにもいかん。何せ執筆者とディスカッションしなければならんのだから。大体、最新の知見が満載(恐らく)なわけで、そんな都合のいい解説書があるかどうか。期限はあと 1週間。泣きそう。

話は変わる。

「貧しくとも楽しい我が家」

実に良い言葉である。いや。別に貧しいわけではないのだが。

「楽しくとも貧しい我が家」

実に嫌な感じである。最初の言葉と意味は同じなのだが印象が全然違う。何が言いたいのかというと、言葉を正しく伝えるのは当然大事なことなのだが、それと同じくらいに「伝え方」っちうもんも大切とちゃうんかなあ、と思った次第で。つまらん一般論だが。

2003/07/22/Tue.

実験がうまくいかん。どこが悪いのかすらわからん。困った。

今日のゼミでは国際学会のレポート。最近、講義やゼミで発表が続いてばかりで、なかなか腰を落ち着けて実験ができん。まだまだ講義のレポートや課題が山積みで、7月はこれらで終わりそうな予感。8月はインジェクション強化月間にして、何とか 9月末の生物物理に間に合わしたいもんだが。しかしインジェクション始めたら実家に帰れんのよなあ。ライフサイクルが早いのも良し悪し。

デジカメ購入から一夜明け、一つ気付いたことがある。

別に写したいもんがねえ。

買ったらすぐに飽きるだろうなとは思っていたが、こうも早いとは。これではいかん。そのうちまた企画を考えて有効活用することにしよう。

2003/07/21/Mon.

1人でじっと家にいては、やはり煙草を吸いそうになる。出かけることにした。

実は前々からデジカメが欲しくて、前日もバイクを駆って家電屋を梯子したのだが、結局カタログだけをたんまりと手に入れて大人しく帰ったのだった。今日は買うぞと、昨日とは違う方面の家電屋を巡ることにして自転車で出発。本当はバイクで行った方が良いのだが、禁煙のイライラはやはり運動で解消するのが吉かと思い、クソ暑い中を、何度か行ったことのあるパソコン屋を目指して出かけた。

道に迷う。

暑い。暑いがな。汗だくになりながら自転車を漕ぎまくり、ようやく目当ての店に辿り着いたのは我が豪邸を出発してから 2時間後だった。既に疲労困憊。「ヘイヘイ、今日も数軒回って一番安いところで買うぜ」と力んでいたのも今は昔。

「もうええ。もうココで買う! 昨日の店より高くても絶対ココで買う!!」

何というヘタレ。しかしながら目当ての機種はなかったので買おうにも買えん。仕方がないのでもう1軒行かねばならない。クーラーで涼んで若干復活しており、しかも近くに家電屋があったはずなので楽勝だろうと店を後にしてから、

また道に迷う。

1時間後、ようやく 2軒目に到着。ここでは目当てのシリーズは置いていたが、安目のエントリーモデルは品切れだとか。ミドルクラスとハイエンドしかない。良いものを見れば欲しくなるのが人の常。どうせ予算オーバーならとハイエンドを買う。馬鹿。でも嬉しい。誕生日やしね。

2003/07/20/Sun.

今日から俺も 23歳である。せっかくだから酒でも飲もうかと思ったのだが、1人で飲んでいては煙草に手が伸びそうなので、急遽ヒゲマン氏を誘って飲みに行くことに。今から行ってきます。

2003/07/19/Sat.

突然だが、明日から禁煙することにした。喫煙も今日を限り。あと 2時間しかないが。禁煙を決意した理由は色々とあるが、これは自分でもよく説明ができない。とりあえず「健康を慮って」などという、何となくケチ臭い理由ではない。

禁煙を完遂する楽しみとして禁煙貯金をする。毎日 250円。卒業するまで約 20ヶ月なので、30日 × 20 × 250円で 15万円ほど貯まる予定となる。この金で、今一度行きたいと思っているバンコクへ卒業旅行に行くのも悪くない。禁煙に挫折した場合、それまでの禁煙貯金はどこかに募金する。貯まれば貯まるほど惜しくなって禁煙を続けざるを得ないだろう。

しばらくはしんどいかもしれんが、色々と勝手に企画して自分を盛り上げようかと思っている。

2003/07/18/Fri.

本棚が欲しい。収納能力が限界に近付いている。が、我が部屋の収納能力も臨界点に達しており、新たな本棚が設置できるかは怪しい。

やらなければ、と思い続けていることの一つに、蔵書のデータベース作製がある。是非ともやりたいのだが、壁と化した本棚の群れを見上げるたびに二の足を踏んでしまう。一度作ってしまえば、あとは買った分だけそのつど追加していけばいいのだが。何でも最初の叩き台を作るというのは面倒なもんである。

2、3年前に 1,000冊を越えたという記憶がある。2,000冊には達していないだろうが、それでも千数百冊はあろう。これだけの本について、著者名をはじめ十数項目の空欄を埋め続けなければならんと思うと気が遠くなる。作業の間の飯代くらいなら出せるので、誰かやってくれんもんか。

2003/07/17/Thu.

今朝の講義は俺が発表者として英文伝記の一章を簡単に解説した。ノーベル賞を受賞した線虫研究者の話である。前章までにセントラルドグマ(DNA からタンパク質生成までの一連の流れ)が解明されたというところまで話が進んでいる。そのため今日の章は、ある人が冗談で「That's the end of molecular biology(分子生物学は終わった)」と書いたというエピソードから始まる。

今日の章では、分子生物学はこれからだと主人公が考える。高次生命現象を解明するモデルとして線虫が選ばれる。様々なプロジェクトが立ち上げられ、線虫のゲノム、神経ネットワーク、全細胞系譜が解明された。それをK先生が嬉々として解説しているところに F氏が一言、

「That's the end of C. elegans(線虫は終わった)」

笑った。

2003/07/16/Wed.

K先生が俺を説教するとき、必ず「ドクターに行くのなら」「研究者になれば」という枕詞が付く。他の人に小言を言うときもそうなのかどうかは知らないが、博士課程に進学するつもりなどさらさらない俺は返答に困る。こんな言葉尻を取り上げて否定するのもなんなので、いつも適当に受け流している。さぞヤル気のない学生と思われていることだろう。あるとは決して言うまいが。

K先生の言説が寄る根拠というのは、いつも極めて不可解である。凡人には理解できぬが本人の中では筋が通っているらしい。今朝は「アンタがリーダーシップを発揮しないと」などと言われる。勿論、例の枕詞が付いている。修士 1年がそんなものを発揮できるわけがない。聞けばこの言葉、ヒゲマン氏も賜ったという。俺が聞く限り、博士課程の諸兄は全員言われていると思ってまず間違いがない。皆が皆にリーダーシップを発揮させてどうしようというのか。キラめくラボ。幻想。

2003/07/15/Tue.

コンビニのざるそばを食いながら書いているのだが、ここで箸を止めて声を大にして言いたい。

「ざる」あらへんやん。

2003/07/14/Mon.

2、3年前からだろうが、至る所で「アジアなんとか」という文字をよく目にするようになった。ファミレスに行けば「アジアンフェア」とかなんとかでインドやタイの料理が食えるし、デパートの物産展でもまたしかり。お茶のペットボトルでは中国茶が一つの勢力を形成しており、CM でのキーワードも必ず「アジア」である。

以前から非常に気になっていたのだが、ここには「日本もアジアである」という視点が完全に欠落している。何なのだろうか。

2003/07/09/Wed.

「Devil May Cry 2」を購入し、とりあえず「Normal」モードのダンテ編とルシア編をクリアして肩凝りの T です。こんばんは。

7月 2日。ポスター発表最終日である。学会自体は 3日の午前まで開催されるのだが、俺達は 2日深夜の便で帰国することにしていた。当然チェックアウトは 2日にする。俺とヒゲマン氏は朝早く起き、テキパキと荷物を片付け、颯爽とチェックアウトした。さて、朝飯でも食うかということになったとき重大問題発生。大学内で飯を食うには泊まっていた部屋のカードキーが必要なのだ。気付いたのは返却後。時すでに遅し。

仕方ねえなあ、とぼやきつつ、とりあえず荷物を預けることにした。利用したのは食堂の前のロッカー。みんな美味そうに飯を食ってるではないか。俺達は荷物を預けるだけ。とほほ。

前から目に留まっていたバーガーキングで朝飯。しかしながら店員の愛想悪過ぎ。何で怒ってんねん。怖いがな。日本では考えられんな。あそこのスマイルは 5ドルくらいしそう。

午後はポスター発表。チェックしていた発表はこの日が一番多かった。それらを見て回るだけであっというまに終わってしまった。

夕刻には広大な芝生の斜面に寝転がり、ヒゲマン氏と UCLA での最後の一時を楽しむ。夕食はやはり 1週間お世話になりっぱなしだったレストラン JFD で。最早ここの巨大なハンバーガーにも驚くことはなく、あっさりと平らげてしまった。これで俺も立派なアメリカ人。

21時。タクシーに乗って LA 空港に向かう。さらば LA。俺はまた来るよ。今度は学会ではなく。

2003/07/08/Tue.

昨夜からハヤシライスばかり食っている T です。こんばんは。

7月 1日。朝からセッションを聞き、午後はポスターを見て回る。夜は最早日課と化したレストラン JFD での食事。日本では「不味い」という印象しかないバドワイザーだが、ここで出てくるものは非常に美味い(ような気がする)のは何故?

部屋に戻ってくつろぐ。ところで、俺もヒゲマン氏も自室では裸で過ごすタイプで、LA に来てからも部屋にいる間はトランクス 1枚でうろうろしたり寝たりしていた。この夜も 2人してほぼ全裸でベッドに横たわっていたのだが、その時ノックの音が。

誰だろうと思いながら俺は服を着始めたのだが、着終わるより早くドアが開いたのだった! 全室カードキーにより施錠されているにも関わらず。

入ってきたのは警備員と思しきオッサン 2人組だったが、彼等は俺(ズボンを履こうと前屈み中)とヒゲマン氏(トランクス一枚でベッドの上に仰向け)の姿を見ると、

「…… I'm sorry」

とだけ言い残して部屋を出ていった。

やべ、絶対ホモやと思われた!

数分後、再びノックがあり、先の2人が入ってきた。どうやら切れていたバスルームの電球の交換に来たらしい。終始無言で作業する 2人。気まずい。作業が終わり、帰る際に投げ掛けられた「Good night」の声が意味深な響きを持つように聞こえたのは、俺の深読みのし過ぎだと思いたい。

2003/07/07/Mon.

脳の英語野が活性化している間にトピックスの論文を読んでしまおうと必死の T です。こんばんは。

学会は 6月 29日の午後7時に始まる。朝から食っては寝ての繰り返しで夜を待つ。セッション会場は城かと見まごうばかりの巨大なホールで、そこに参加者全員が集う。2階席に陣取ったのだが、見渡す限りほぼ満席。こいつら全員が線虫の研究しているのかと思うと頭がくらくらする。優秀な頭脳の持ち主がこれだけ寄ってたかって解析して、一体何がわかっていると言うんだろうか? 自分を含め、色々と疑問を覚える。

さて、セッションの発表だが、英語が聞き取れねえ。

この一言に尽きる。スクリーンにはパワーポイントのフィギュアが映され、手元には要旨集もあるので、聞き取れた断片をつなぎ合わせて話の大まかな流れはわかるものの、それが限界。ええのか、本当に俺が参加して。

この夜の発表で面白かったのは、CGC (Caenorhabditis Genetics Center; Caenorhabditisとは線虫のこと) のプレゼン。変異体の登録数が順調に増加しているとか、これだけ色んなラボに線虫を送ったとかいう通常のデータ発表の後、次に発表したのがランキング。最近 2年間でどのラボにどれだけ線虫を送ったとか。一番面白かったのが同じ線虫を要求したラボのリストで、つまりは、このラボには線虫の継体能力がないという一種の暴露なのだが、

それにしても 2年間で 3回も野生型を CGC に要求するなよ、複数の某ラボ。

しかし線虫絶滅王の異名を持つ俺(自分が解析している変異体を、3度に渡って複数系統絶滅させた)がとやかく言えることではないのだが。

2003/07/05/Sat.

日本に帰ってきたので回転寿司を食いに行ったのだが、厨房丸見えの位置に座ったため、見なくてもよい調理過程の裏側まで見てしまった T です。こんばんは。

LA に行くには大韓航空を利用するのが安上がりだ。最寄りの空港からソウルに行き、そこから LA へと向かう。ソウルまでは 1時間あまりのフライトで到着。早いし近い。おまけに空港は最近できたばかりで美しい。乗り換えまでの待ち時間に、早くもバーで 20ドル分もの酒を飲む。ソウルから LA までは 12時間ほどであったか。豚箱のようなエコノミークラス。小さいはずの日本人でさえ窮屈なのに、デブの外人にはさぞ苦痛に違いないと勝手に同情する。

どうでも良いが、到着した LA の現地時間は 6月 28日の午前。これって俺が日本を出発した時間なのだ。日付変更線を越えたとはいえ、変な感じは否めない。

LA 空港からはタクシーに乗って、会場であるカリフォルニア大学 LA校 (UCLA) に向かう。広い、でかい。そのくせ今は夏休みでキャンパスには人がまばら。俺達が泊まる宿舎は UCLA 内にある。チェックインを済ませ、日本で言うところの大学生協のような場所で昼飯を食う。メニューは豊富で不味くもない。ただ、毎日食ってたら明らかに太るであろうというメニューしかないのはどういうことか。

飯を食ってから UCLA 内をぶらつき、夕刻には眠くなったので部屋に引き上げて寝る。起きると午後11時頃であったか。同室のヒゲマン氏とともに夜の街を徘徊しようと出かける。昼は雲一つ青空で暑いばかりのカリフォルニアだが、夜は結構冷える。それにしても、金曜の夜だというのに人がいない。通りの店はほとんど閉まっていたが、厳重にシャッターでロックされている、ということもない。治安は良さそうだ。

JFD というレストランが開いていたので入る。ビールを頼もうとしたが「パスポートを見せろ」と言われた。年齢確認のためらしいが、あいにく 2人ともパスポートは持ち歩いておらず、日本の運転免許証などを見せて交渉したが無駄だった。そらそうやわな。

生年も「昭和55年」とか書いてあるし。

仕方なくコーヒーとホットドッグを注文する。ところが出てきたものを見て俺は愕然とした。巨大なトレーの全面にポテトフライが敷き詰められており、その上に信じられないくらいに太いソーセージが挟まれたパン。明らかに全開にした口の直径よりでかい。

ギャグに違いない。これがアメリカンジョークってやつか。

飛行機の中で見たアメリカ版ドッキリカメラを思い出す。カメラはどこだ。勿論そんなものはない。本気や、こいつら。とにかく詰め込めるだけ腹に詰め込むが、全然なくならない。オエップ。もう食えねえ、と腹をかかえて往生しているとウエイトレスがやってきて「デザートはいいのか?」

食えるか、ボケ。

デザートの写真を見たが、どいつもこいつも突然変異を起こしたとしか思えないくらいに巨大。こんなものを食った日にゃあ、ファンタのような糖尿が出るに違いない。

店を出て UCLA に戻ろうとするが、道に迷った。行けども行けども同じような光景で、どっちがどっちだかさっぱりわからない。元いた店に戻ろうともしたが、それすらかなわず。仕方がないので怪しげな男の若者 2人組に道を聞く。あっさりと教えてくれたが、その後で、

「俺達バス代を落としちまってよ。金持ってる?」

やべ、たかられた。いくらボラれるかわかったもんではないので、俺とヒゲマンはアジア顔を武器に「お前達が何を言ってるのかわからん」と必死に抵抗するが、敵も中々帰してくれない。しつこすぎるぞ、お前ら。最終的に向こうが「3ドルくれや」と金額を提示したのでヒゲマン氏が払った。

それにしても 3ドルかよ。日本で深夜に「バス代くれや」と言われたら「どこまで行くねん!」というくらいにボラれるに違いないのだが。本当にバス代だったのだろうか。でもバスが走ってる時間ではないしなあ。あれは何だったんだろうか。

2003/07/04/Fri.

ようやく帰国した T です。こんばんは。

疲れているので LA 滞在記は明日から連載します。