- 丸刈りの話 (2)

2003/04/26/Sat.丸刈りの話 (2)

丸刈り丸刈りというけれど、普段の俺は別に短く刈り込んでいるわけではなく、ごく普通の長さの髪形であって、丸刈り時には、これを急にばっさりと落としてしまうのである。当然、劇的に外見が変わるわけで、そこに色々と逸話が生まれたりする。今まで何回かこのような丸刈りを実行してきたのだが、今回は最初の丸刈り体験を書こうと思う。

高校時代、俺は陸上部で長距離をやっていた。あれは確か1年目の夏のことだったと思うが、めちゃめちゃ暑いので坊主にしたら気持ち良かろうという話を長距離陣でしていた。どうせやるのなら、皆で一斉に坊主にする方がインパクトが強かろうという結論になった。何故インパクトが強くなければならないのかという議論は一切なかった。

長距離陣の練習メニューの一つにロードワークがある。要は学外の一般道路を 10 km 程度走りに出ること(小さいグラウンドをぐるぐる回って 10 km を稼ごうとすると気が狂うから)である。このときに長距離陣全員で丸刈りにして帰ってくれば一番インパクトが高いだろうということになった。暑い季節のことで、常に帽子をかぶって練習していたから、すぐにはバレないだろうとも思われた。練習の最後にグラウンドに礼をする時に帽子を取って挨拶をするのだが、そこにいきなり坊主頭が 10個ほど並べば、これはもう笑いを取れないわけがないだろうという結論になった。どうして笑いを取らねばならないのかという議論は一切なかった。

いざ出陣。ロードワークに出発した我々は、すぐさま近くの散髪屋に飛び込み、驚くオッサンに「丸刈りにしてくれ」と頼んだ。オッサンは目を白黒させながらも 10個の坊主頭を作ってくれた。

時間を見計らい、学校に帰ってくる。帽子を被っているせいか、誰からも髪形の不信を問われることもなかった。そして練習終了。全員が整列し、脱帽、グラウンドに礼。頭を上げた他の部員たちは驚愕し、俺達を指さしながら笑い合っていた。他の部の人間の笑い声も聞こえてくる。我々は陶然としながらグラウンドに頭を垂れ続けていた。顧問の声が聞こえるまでは。

「何を考えとるんだ。男子長距離、全員こっちに来い」