- 『交渉術』佐藤優

2011/06/25/Sat.『交渉術』佐藤優

ロシアとの北方領土交渉に深く関わった筆者の経験を元に、交渉術の原則や具体例が記述されている。信頼の醸成方法、罠への嵌め方、取引の仕方など項目は多彩だが、政治の実態を反映してか、基本的に「男対男の交渉」に限られている。少し気になるところではあるが、この点については何の言及もない。

もっとも本書には、交渉術をテーマにした北方領土交渉史といった側面があり、むしろそちらに力点が置かれているともいえる。日露関係について興味深いエピソードが満載だが、多くは佐藤の他の著作で既に書かれていることである。

巻末には「東日本大震災と交渉術」という小文が増補されている。「国家翼賛体制の確立を!」「大和魂で菅直人首相を支えよ」「頑張れ東京電力!」など、気の利いた煽り文句が並んでいて面白い。もちろん、佐藤の真意がもっと深いところにあるのは言うまでもない。一読の価値がある。