- 『宇宙「96%の謎」』佐藤勝彦

2011/04/29/Fri.『宇宙「96%の謎」』佐藤勝彦

副題に「宇宙の誕生と驚異の未来像」とある。チープなタイトルだが、著者はインフレーション理論の提唱者であり、易しい語り口とは裏腹に内容はなかなか高度である。

本書の主題の一つは、インフレーションが生じる原理である。真空の相転移によってインフレーションが起きるという理論を端的に示したグラフは、これまで何となくしか理解していなかったインフレーションに具体的なイメージを与えるのに役立った。本書を読んでの大きな収穫である。

後半では膜宇宙モデルが紹介されている。膜と膜(我々の宇宙と別の宇宙)の間を唯一伝播できる重力が暗黒物質の正体ではないかという仮説が面白い。本当なら、ダークマターが見えないのも当然である。