- 『日本/権力構造の謎』カレル・ヴァン・ウォルフレン

2009/12/01/Tue.『日本/権力構造の謎』カレル・ヴァン・ウォルフレン

篠原勝・訳。原題は "THE ENIGMA OF JAPANESE POWER"。

外国人による日本論の大半は噴飯物であり、冷笑の対象になればまだ良いほうで、大抵は無視され忘却される。「外国人には日本 (人) が理解できない」と心底で信じているところが日本人にはある。一方で西欧人は、「現代日本は民主主義と資本主義という西欧のルールに則って我々のゲームに参加しているメンバーである」と (一応は) 信じており、その文脈で日本を読み解こうとする。日本人が海外製の日本論を無視するのも、また実際に、その論の多くがヒドいできであるのも、この捩れに依るところが大きい。

本書は日本の構造を、その権力の行使のされ方という観点から読み解いたものである。著者は 1962 年以降、日本に在住している新聞記者だという。

本書が優れているのは、冒頭の問題を提出することで、「外国人が日本を誤解しているのはなぜか」が、外国人にも日本人にも理解できるように記述されている点にある。つまり本書は、外国人のための日本論であると同時に、日本人のための西欧論にもなっている。これは非常に大きな特徴である。

外国はなぜあんなにも日本にプレッシャー——ときに相当に理不尽に思える——をかけてくるのか? そう疑問に思ったことのある日本人は多いだろう。このような例が、日本と外国の discommnucation の結果であることが、本書を読めば理解できる。日本は外国を誤解しており、外国は日本を誤解している。誤解を正すような書物や PR は過去に何度もあった。しかし対処療法的に各問題の誤解を正しても、誤解のメカニズムが双方に自覚されない以上、新たなテーマに対して再び誤解が起こるであろう。そこで本書の、「なぜ誤解するのか」という主題が生きてくる。

本書はあくまで西欧社会に提出された日本論であるが、日本を愛する著者による、日本人に向けられた温かい提言も数多くある。蒙を啓かれるという表現に相応しい名著。