- 『電子と原子核の発見』スティーヴン・ワインバーグ

2009/06/05/Fri.『電子と原子核の発見』スティーヴン・ワインバーグ

本間三郎・訳。副題は「20 世紀物理学を築いた人々」。原題は "THE DISCOVERY OF SUBATOMIC PARTICLES"。

「まえがき」には「この本では、通常の原子を構成している素粒子、すなわち、電子、陽子、中性子の発見を取り扱っている」とある。これらの素粒子は誰もが知っており親しみやすい。各粒子の特徴と役割ははっきりしており、これら 3 つの素粒子で構成される古典的な原子のモデル——すなわち、陽子と中性子が原子核を構成し、その周囲を衛星のように電子が飛び回っている——を知らないものはいない。

これら粒子の「発見」を扱う本書では、理論よりも実験の話題が多くなる。20 世紀初頭、物理学者たちはどのような装置とアイデアでこれら粒子を捕まえたのか、これが詳しく書いてある。複雑で高度な機械を使っているわけではないので、非常にわかりやすい。

多くの実験は英国キャベンディッシュ研究所でなされた。中でも重要なのは J・J・トムソンによる電子の発見、そしてラザフォードによる原子模型の提唱だろう。この 2 つの話題には特に紙幅が割かれてある。もちろん、周辺の事情と歴史についても充分な記載がなされている。

原著第 2 版で追加されたという最終章では、ニュートリノや反粒子についても簡潔に述べられている。また巻末の「付録」では、本文中に登場する数式、公式の解説がされている。