司馬遼太郎と井上ひさしの対談本。対談が行われたのは 1995年。主題は、
となっている。対談当時の日本は、バブルが弾け、地下鉄サリン事件が起こり、惨憺たる有り様であった。
司馬「このところの日本は、なにか煉獄にいるかのようですな。」
(「昭和」は何を誤ったか)
このテーマについて、現代日本批判が行われる。宗教について、言葉について、政治について、人物について。また、各論に対して、鎌倉の宗教はこうだった、明治の学問はどうだった、昭和の軍部はああだったと対比され、比較がなされる。それだけといえばそれだけなのだが、現代と、または世界と対照するに足る歴史が残っているのは、日本の誇るべき点だろう。これからも続く日本の歴史を俺達が汚してはならねえよなァ、と思うだけでも本書を読む価値はある。
これからの日本は「美しき停滞」「美しき成熟」を目指すべき、というのが 2人の結論である。残りの人生の方が長い私達からすれば、それはちょっと……と思わないでもない。しかしそう思うのならば、何らかの形で歴史の創造に関わる覚悟が必要だろう。なかなか重たい話ではある。