副題に「戦後をつくった陰の男たち」とある。本書は 5つの章からなる。
それぞれの組織・土地・時代の人脈を探った話であるだけに、夥しい数の人間が登場する。意外なところに意外な人名を発見したりして、すこぶる興味深い。肩書きだけを見れば全く無関係、あるいは正反対の立場である 2人が過去には同じ釜の飯を食っていたり、その人脈が実は現在でも強固であったり、などなど——面白い。面白過ぎて、「本当なんだろうか」とすら思えてくる。
著者はとにかく多数の人間を実際に取材して様々な証言を引っ張り出す。しかし話題が「人脈」であることもあり、その「証言」がどこまで信憑性のあるものかは判断に難しい部分もある (面白過ぎるという事実がこの疑惑に拍車をかける)。客観的な証拠となる文献や写真があるわけでもなく、実際に各証言者の話が食い違うことも多い。
もっとも、著者や証言者の話がウソだと言っているわけではない。人脈というものは多分に感情的、人間的なものを含んでおり、その人にとっては、その人脈が「そういうもの」であるという理解もできる。例えばある組織の人脈について考えたとき、その組織を愛した人と憎んだ人では、また人脈が持つ意味も異なってくるだろう。そういうことだ。
政治でも経済でも情報でも、その根本は人間どうしのやり取りであることが痛感させられる 1冊。