- 『黒体と量子猫』ジェニファー・ウーレット

2007/07/14/Sat.『黒体と量子猫』ジェニファー・ウーレット

副題に「ワンダフルな物理史」とある。原題は『Black Bodies and Quantum Cats』、副題が「Tales from The Annals of Physics」。全2巻で、第1巻が「古典篇」(尾之上俊彦、飯泉恵美子、福田実・訳)、第2巻が「現代篇」(金子浩、小野木明恵、大山晶子、野中香方子、水谷淳・訳) となっている。

気軽に読める科学コラム。科学的発見、発展、技術的応用に関するエピソードが 38個、年代順に並んでいる。タイトルの通り、話題は主に物理学である。一方で「絵画における遠近法の確立には光学的な機器の使用があった」「ジェットコースターの歴史」などという話も多分に含まれていて、むしろそちらの方が興味深かった。

科学的な概念の説明には、テレビや映画、小説の内容やキャラクターが比喩として使われる。このあたりを面白いと思うか思わないかは、好みがわかれるかもしれない (採り上げられる作品はアメリカのものが多いから、日本人にはピンと来ないものもある)。文章はユーモラスでキレが良い。複数の訳者による翻訳だが、全編を通じて文体は統一されている。

サイエンスものとしては物足りないが、逸話は面白い。上質のコラム。息抜きにはちょうど良い。