- 『デビルマンレディー』永井豪

2007/07/02/Mon.『デビルマンレディー』永井豪



文庫版全9巻。『デビルマン』の続編という理解で良いと思う。少なくとも、『デビルマン』→『レディー』の順番で読むべきだ。

ヒロインの不動ジュンがデビルマンレディーに変身し、人間のために (というほど単純ではないが) ビーストと戦うという設定は、『デビルマン』とほぼ同じ。主人公が若い女性であり、また連載媒体が「週間モーニング」ということもあって、少年マガジンで連載された『デビルマン』よりも、格段にセックスとバイオレンスがパワーアップしている。

序盤は、ビーストを倒していくレディーというエピソードの積み重ね。『デビルマン』の人気にあやかりつつ、そこに色を付けただけの作品かと思いながら読み進めると、良い意味で期待は裏切られる。中盤から物語は急激に展開する。『デビルマン』の主人公・不動明が再登場し、『デビルマン』における最終決戦のその後が語られる。ダンテの『神曲』をモチーフにした地獄巡りの下りは圧巻だ。絵も凄みがある。

そして徐々に、『レディー』が『デビルマン』を下敷きにして、しっかりと構想された作品であることがわかってくる。そのコンセプトを最初に出さないところが凄い。こういうのって、どうしても冒頭にチラッと見せたくなるもんだけどね。大家の余裕だろうか。

それにしてもエロい (こればっかだな)。特に後半の扉絵のエロさは尋常ではない。興奮するとかそういう類ではなく、しみじみとエロい。女性にはわからないと思うが、オッサンにはわかるはずだ。男でも、若い人にはわからないかもしれない。手塚治虫の女性も相当にエロいが、それと同じ意味である。例えば手塚治虫永井豪の絵柄でエロ漫画を描いても売れないだろう。ちょっと違うのである。

それにしても永井豪は、作品全体に巨大な伏線を張るのが上手い。連載漫画でこういうのは難しいと思うのだが。短いエピソードの中でミステリー的な仕掛けをするのはそれほど難しくないけれど (『ジョジョ』がその典型)、長期に及ぶ連載ではなかなか見受けられない。特に『デビルマン』や『レディー』は、物語のドライブが命の作品だから、チマチマやると世界が小さくなってしまう。それを回避しつつ、怒濤のようにストーリーを流しながら、きっちりと伏線を回収していく技術は剛腕といっても良い。