- 『司馬遼太郎全講演 [5] 1992-1995』司馬遼太郎

2007/01/13/Sat.『司馬遼太郎全講演 [5] 1992-1995』司馬遼太郎

司馬遼太郎講演集第5巻。1992年から 1995年までの講演が収められている。

話題は色々である。

司馬の講演を読んでいつも思うのは、話の冒頭で、聴衆の自尊心をくすぐるリップサービスが展開されている点だ。無論、単なるヨイショではなくて、その土地や聴衆の職業の歴史に絡めて美点を褒める。薩摩に行けば薩摩人の性格を称える。会津に行けば、薩摩に蹂躙された会津の悲史をともに嘆く。八方美人ではなくて、要は、歴史には様々な視点があること、その数だけ「歴史」があること、ということなのだろう。

感情移入が基本にあるという点で、印象批評的であるともいえる。司馬が「小説」に拘った理由もここにあるのではないか。

このシリーズは本書で完結である。巻末には充実した通巻索引が付く。