- 『宰相の条件』福田和也

2006/09/20/Wed.『宰相の条件』福田和也

副題に「今、日本に必要な品格と見識」とある。

今日、自民党総裁に安倍晋三官房長官が選出された。近々、総理大臣として組閣するのは確実である。

さて、本書では歴代の総理大臣の事跡を振り返りつつ、「宰相」に求められる条件とは何か、現在の日本の「宰相」に相応しいとは何か、が問われている。福田は、これまでの宰相をその歴史的意味合いから 6世代に分類し、小泉純一郎首相をもって第7世代の嚆矢としている。

  1. 藩閥政治 :伊藤博文 (初代) 〜寺内正毅 (9代)
  2. 政党政治 :原敬 (10代) 〜 犬養毅 (18代)
  3. 挙国一致 :斎藤実 (19代) 〜 鈴木貫太郎 (29代)
  4. 第二の建国:東久邇宮稔彦 (30代) 〜 佐藤栄作 (39代)
  5. 利益の配分:田中角栄 (40代) 〜 竹下登 (46代)
  6. 求心力ゼロ:宇野宗佑 (47代) ~ 森喜朗 (55代)
  7. ?????:小泉純一郎 (56代) 〜

小泉首相が新世代とされる理由は、国民が「直接民主主義的なメンタリティで、自ら首相を選びたがっている」からであり、「そして、小泉首相誕生の瞬間、多くの日本人は、自らの手で首相を選んだように感じた」からである。今回の安倍総裁誕生の経緯を振り返ったとき、なかなかに鋭い指摘であると思わざるを得ない。

さて、上記のような現在の国民のメンタリティは「政治意識の高まり」といえるのだろうか。容易に予想できるが、福田和也の意見は否である。それは「悪しきポピュリズム」に堕する危険を常に秘めている。問題は我々の「政治熟成度」であるのだが、この手の議論がいつも陥るように、ではどうすればそれが高まるのかという具体的な提案はない。せいぜいが「自覚を持て」というくらいで、まァ確かにそれくらいしか言うことはないわな、と俺も思う。