- 『陰摩羅鬼の瑕』京極夏彦

2006/09/18/Mon.『陰摩羅鬼の瑕』京極夏彦

京極堂シリーズ第7冊。文庫版が出たので再読。

「おんもらき」とルビが振ってあるので、ああそうか、と流してしまうのだが、よくよく漢字を見てみると、「摩羅」って「マラ」ではないか。「陰マラ鬼」。イヤらしい妖怪である。

あらすじは比較的シンプルだ。元伯爵である由良家の現当主・昴允の許に嫁ぐ女性は皆、婚礼の翌朝の、ほんの僅かの隙をついて殺害される。全く同じ事件が過去に都合 4回も起きているが、犯人はおろか、手口も動機も不明。そして今、伯爵は 5度目の結婚を控えていた。惨劇の連鎖を断ち切るため、今回は探偵として榎木津礼二郎が呼ばれていた。そして成り行きで付き添う羽目になった関口の姿も。果たして 5度目の犯行は防げるのだろうか。

これまでのシリーズに比べ、事件が単純に過ぎるのが大きな特徴だろう。舞台も「鳥のお城」と呼ばれる伯爵邸に限られ、登場人物も少ない。作中で看破されるまで真相がわからなかったという読者は少ないと思う。

今回は関口が大きな役割を演じている。事件の主人公であり、極めて特殊な人間でもある伯爵と一対一で議論を繰り広げる場面も多い。そして、関口は自ら真相に至るのである。が、謎解きはやはり京極堂。関口の口から、彼の辿り着いた真実を語ってほしかった、と思うのは俺だけか。