- 『だれが、いばら姫を起こしたのか』イーリング・フェッチャー

2006/09/08/Fri.『だれが、いばら姫を起こしたのか』イーリング・フェッチャー

丘沢静也・訳。副題に「グリム童話をひっかきまわす」とある。

近年ブームとなった、童話の原典探し、精神分析などの先駆け的な 1冊。著者のフェッチャーはドイツの政治学者であり、本書ではグリム童話を「自由社会の拡大」「資本家と労働者」といった切り口から論評する。とはいっても、真面目な本ではない。アカデミックな体を装ってはいるが、実際はパロディである。

俎上に乗せられるのは、「赤頭巾ちゃん」などのよく知られた 14編。まず最初に、実際に流布されているバージョンが紹介される。実は、これを読むだけでも結構懐かしくて楽しかったりする。その後で、著者による評論がひとくさり。最後に、その解説を元にした著者謹製のパロディが披露される。これが面白い。「七人の小人」は 7人のパルチザンの階級闘争であり、お妃の「鏡」は秘密警察のアレゴリーとなる。「シンデレラ」は抑圧された使用人によるストライキの物語となる。

面白いけれど、マジになって読んでしまう人もいそうだな。