- 『ガリア戦記』ユリウス・カエサル

2006/08/03/Thu.『ガリア戦記』ユリウス・カエサル

近山金次・訳。原題は『Commentarii de Bello Gallico』。

前58〜51年にかけて行われたローマ軍のガリア遠征の記録を、指揮官であるカエサル自身が著したのが本書である。8年に渡った戦争は、1年毎に 1巻、すなわち全8巻にまとめられたが、実際にカエサルが書いたのは 7巻までであり、本書もまた、7巻目までの訳書である。

読みにくい、というのが最初の印象であった。耳慣れぬ固有名詞、簡潔過ぎるがゆえに細部がわからぬ描写、ローマとガリアに対するそもそもの我が認識不足、などなどが理由である。が、これは 1年目を読み終えると気にならなくなった。

ポイントは、本書はカエサルによって書かれた、ということを充分に認識して読み進めることだろう。そんなの当たり前じゃないか、と思われそうだが、あまりに客観的な記述、そして自身のことも「カエサルは〜」と三人称で書く独特の文体により、ついつい歴史家が書いた史書のように思い込んでしまうのだ。それではつまらない。突き放した冷静な描写がなされているけれども、これを書いているのは、そのとき勝利した、あるいは苦境に立たされていたカエサル自身なのであり、それを考えると味わいが全く異なってくる。ここにハマれば、一気にガリア戦記の世界に浸ることができる。

記録的な文章が続く中、ときおり顔を覗かせるカエサルの本音がまた絶妙で、彼の人気の源はこんなところにあるんだろうな、と思えてくる。