- 『今昔続百鬼 雲』京極夏彦

2006/06/18/Sun.『今昔続百鬼 雲』京極夏彦

副題に「多々良先生行状記」とあるように、本書は妖怪研究家・多々良勝五郎センセイが旅先で出会う、不可思議な事件を綴った中編集である。収録作は、

の 4編。いずれも、伝説蒐集家・沼上蓮次の一人称で語られる。

概要

各話の構成は基本的に同じである。妖怪馬鹿の多々良センセイと伝説馬鹿の沼上は、戦後急速に失われつつある全国の伝承故事由来縁起風習怪異を採集するべく、貧乏旅行で各地を訪ねる。奇矯この上ない多々良センセイと、比較的常識のある沼上のしょうもない喧嘩を交えながら旅は進む。なぜか 2人はいつも道に迷い、ほうほうの体で宿と飯にありつくのだが、その地で、妖怪が絡んだ事件に巻き込まれてしまう。果たして真相は、というわけである。

事件の構成自体は、いわゆる京極堂シリーズや、そこから派生した榎木津の「百器徒然袋」と同じである。「百器〜」が榎木津を全面に押し出した、いわば彼の物語であったように、本書では多々良センセイのキチガイぶりが縦横に描かれている。多々良センセイは、京極作品の登場人物でも指折りの変人である。彼の言動を読むだけでも楽しい。

事件自体はあっさりしているが、妖怪関係の閑話は豊富である。エピソードによっては、他のシリーズのキャラクターも登場しており、ニヤリとさせられる。