- 『玩物草紙』澁澤龍彦

2006/04/02/Sun.『玩物草紙』澁澤龍彦

身近に存在する「玩物」をテーマに、澁澤龍彦自由に思いを馳せたエッセイ集。

登場する玩物は、「虫」「テレビ」「夢」などの一般的なものから、「男根」「ポルノ」「神のデザイン」といった澁澤好みのもの、あるいは「反対日の丸」「燃えるズボン」など、よくわからないイメージもある。

珍しいのは、それぞれの玩物について、澁澤の個人的な体験、特に幼児・少年期のそれが語られていることである。あまり自分を見せないスタンスの澁澤において、このようなエッセイは貴重である。

玩物はあくまで枕に過ぎず、彼の思い出を通じて記述される、いつもの観念的な遊びが楽しい。澁澤龍彦のルーツがチラリと見れる小品である。