- 『ダ・ヴィンチ・コード』ダン・ブラウン

2006/03/11/Sat.『ダ・ヴィンチ・コード』ダン・ブラウン

2004年に邦訳されて日本でもブームになった世界的ベスト・セラーを今更。文庫化されたので。

主人公はハーバード大学の宗教象徴学教授、ロバート・ラングトン。講演でパリに訪れていた彼は、ルーブル美術館館長のジャック・ソニエールと会談する予定だったが、その夜、館長が現れることはなかった。ホテルで眠りに就いていたラングトンは、館長が殺害されたという警察からの報せで叩き起こされる。館長はルーブル美術館で襲撃され、奇妙なことに、その死体はダ・ヴィンチのウィトルウィウス人体図に模されていた。しかも、どうやら館長は、自らの意志でそのような演出を図ったようだという。おまけに、不可解なダイイング・メッセージまで残されている。

殺人の容疑をかけられたラングトンは、暗号解読官のソフィー・ヌヴーと逃亡しつつ、館長のメッセージを解読しながら巨大な謎に迫っていく。それは、ローマ・カトリック教会が必死になって隠蔽する一方で、ある組織によって連綿と伝承されてきた、イエス・キリストにまつわる重大な秘密であるらしい。

ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」「最後の晩餐」、ルーブル美術館、果てはイギリスにまでまたがるミステリーを解きつつ、あるいは協力者に恵まれ、あるいは敵対者に襲われながら、ラングトンの探索は続く。彼が最後に行き着くモノや場所については書かないが、評判通りの面白さである。

ただ、俺がほとんど海外小説を読まないせいか、やたらに切り替わる場面や視点、ちょっとあり得そうにないアクションなどには興を殺がれてしまった。上質のミステリーなのだから、謎をもっと重厚に、関連エピソードをさらに豊富にしてくれればなあ、とも思う。このへんは、ハリウッド化されることが一種の「上がり」となってしまっているアメリカン・エンターテイメントの悪弊ではないか。

いや、しかし面白かった。機会があれば、他の著作も読んでみたい。