- 『セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴』島田荘司

2006/01/09/Mon.『セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴』島田荘司

島田荘司御大の御手洗もの。文庫で 270頁。島田作品にとってはほとんど短編である。

舞台は、御手洗と石岡が出会って間もない昭和 57年。ロシアの女帝・エカテリーナ 2世より榎本武揚が賜った「セント・ニコラスのダイヤモンドの靴」と呼ばれる歴史的宝物を相続している老女・郁恵。彼女の友人・秀子が、馬車道の彼らの部屋を訪ねた。

郁恵の家は現在落ちぶれており、息子夫婦との仲も悪い。彼女は「セント・ニコラスのダイヤモンドの靴」を、ただ 1人の孫娘に託したいと願っていた。そんな郁恵と秀子が教会のバザーで働いていたその日、にわかに雨が降り出すや、郁恵は血の気を失って倒れ、彼女の息子夫婦は狂ったように花壇の土を掘り返す。その話を聞いた御手洗は一言、「これは大事件ですよ」。

御手洗がいうほどの「大事件」ではないが、なかなかに面白かった。ただ、「セント・ニコラスのダイヤモンドの靴」という大袈裟な設定の必然性は、少なくとも事件に関して、あまりないように思う。お気付きだろうが、本書は『数字錠』や『最後のディナー』と同じ系列、つまり「キヨシのちょっとイイ話」なのである。ダイヤモンドの靴は、ストーリーの最後にキラリと光る。