- 『悪魔の辞典』アンブローズ・ビアス

2005/12/03/Sat.『悪魔の辞典』アンブローズ・ビアス

伝説的なジャーナリストにして風刺家、アンブローズ・ビアス (Ambrose Bierce) による辞典。原題は『The Devil's Dictionary』。

最近、立て続けに赤瀬川原平『新解さんの謎』夏石鈴子『新解さんの読み方』および『新解さんリターンズ』を読んだのだが、そのときにずっと思い浮かべていたのが本書である。『悪魔の辞典』は最初から風刺を目的とし、その語釈も皮肉と毒がふんだんに盛られているが、「独特の語釈」という意味では、『悪魔の辞典』も「新解さん」も変わらない。言葉を単一の説明で定義できない以上、ではどの辞書が有用か、というのは利用者の問題に過ぎないのではないか。

久し振りに『悪魔の辞典』をひもといてみた。数日前の日記に、「『詩』を定義しなければならないが、ちょっと手に余る」と書いたが、『悪魔の辞典』では、こうある。

POETRY, n.【詩】
「雑誌」のはるかかなたの「地方」にある特有の表現形式。

爆笑である。それは (少なくとも一片の) 真実であることからの笑いである。その点では「新解さん」と何ら変わらない。違うのは、それが筆者の意図したことかどうか、という点にある。

『悪魔の辞典』は読む人の模倣意欲を刺激するようで、多くの人が様々な分野で「XX版 悪魔の辞典」というものを作っている。俺も作ってみようかなあ。こんなのはどうだ。

【遺伝】
劣悪な形質が親から子に伝わること。優良な形質は、多くの場合その個体の認識において、後天的に獲得したとされる。