- 『ジゴクラク』森巣博

2005/12/02/Fri.『ジゴクラク』森巣博

森巣博の長編。他の作品と同様、事実なのかフィクションなのかわからぬ文体で書かれている。主人公もいつも通り、作者と思しき「わたし」ことヒロシ。ヒロインは、彼が東京に戻った際に賭場で知り合った若い女性、舞ちゃん。

舞ちゃんは良家の娘で女子大生である。賭場で異様な勝負強さを発揮する彼女は、その瞬間、非常な美しさをもまた魅せる。これも、森巣博の小説で頻繁に登場する女性像である。彼女に興味を持ったヒロシは、彼女が若さ故に持つ「甘さ」を看破する。いくら自分では制御しているつもりでも、一度博打の深みにはまれば、後はズブズブと地獄に沈んでいくだけだ。しかし、彼女に博打をやめさせるわけではないところが面白い。

ヒロシのアドバイスもあり、賭博で大金を手にした 2人は、オーストラリアのカシノでの再開を約する。賭事を極めたい舞ちゃんを、ヒロシが本場でレクチャーするためだ。カシノに乗り込んだ 2人は、東京でボコボコに負かした男と再び出会う。双方のプライドと大金を賭けた、乾坤一擲の勝負が始まった……。

ハッキリいって、作者の他の小説とあらすじはよく似ている。それでも面白いのは、博打という世界自体がスリリングで刺激的であるからだろう。結局、小市民である我々はその深みにはまることはできない。ヒロシと舞ちゃんの活躍にスカッとできること請け合いの良作。