- 『司馬遼太郎が考えたこと 10』司馬遼太郎

2005/09/05/Mon.『司馬遼太郎が考えたこと 10』司馬遼太郎

司馬遼太郎随筆集第10巻。1979年 4月から 1981年 6月までに発表された文章が収録されている。

この頃の司馬は、中国は新疆ウイグル自治区を 2回訪れており、本書にはその紀行文が多数収録されている。彼は昔から中国の少数民族に興味を持っており、特に西域におけるそれに憧れ続けていた。当時、新疆ウイグル自治区に外国人が足を踏み入れることは難しく、司馬も、中国からの招待という形で訪問している。したがって、司馬が見た中国の少数民族政策というものにも、眉に唾を付けて読まねばならない。しかし、この時期の自治区の様子を知ることができる貴重な文章であることには違いない。

さて、俺が最も興味深く読んだのは、『千石船』と題された廻船の話である。これを読むと、日本は島国であるが、そこに住む日本人は決して海洋民族ではなかったことがよくわかる。特に、江戸時代の千石船が明治末期まで現役で稼働していたという証言には驚いた。こんな民族が、よくもまあバルチック艦隊を破ったものである。