- 『逆説の日本史 11 戦国乱世編 朝鮮出兵と秀吉の謎』井沢元彦

2004/03/14/Sun.『逆説の日本史 11 戦国乱世編 朝鮮出兵と秀吉の謎』井沢元彦

「逆説の日本史」シリーズは1巻から読んでいる。最新の第11巻は豊臣秀吉の話である。

秀吉と朝鮮出兵

秀吉という人物は非情に興味深い。正確な出自は不明だが、とにかく下層から関白まで上り詰めたという、とんでもない出世をした男であるのは、まぎれもない事実。戦や経済政策でも高い評価を得ている。同時に、誰もが頂けないと思っているのは朝鮮出兵であろう。惨敗した上、後世にまで悪影響を与えたというので、これは大変評判が悪い。

本書では、前半が秀吉が関白になるまでの話で、ここでは「逆説」というほどのパンチはない (別にこのシリーズは、悪戯に異説を唱えたがっているわけでは決してない)。

後半、かなりのページ数を割いて、朝鮮出兵を記述しているが、ここは結構面白い。そもそも秀吉の朝鮮出兵に関するまとまった記述自体があまりないので、読んでいて普通に面白い。大明征伐については、秀吉は色々と計画している。当時の日本兵が世界最強であったのは間違いない。勝算がなかったわけではないのである。

失敗したのは、造船技術のレベルが低かったことと、致命的に情報が足りなかったことである。あの秀吉が、と呆れるほどの情報不足。やはり、巷間で言われているように、少しボケていたのかもしれない。

秀吉は信長のコピーか

さて、秀吉の各種政策で一番問題にされるのが、実はそれは信長の計画ではなかったのかということだ。検地しかり、刀狩しかり、朝鮮出兵に関してすら、信長のアイデアではなかったのかという本もある。

俺はこの考え方についてはやや否定的である。ちょっと信長を持ち上げ過ぎではないのか。秀吉って、そんなに猿真似ばかりだろうか? 彼は非情に優秀な上、ユニークでもあり、人物としても信長とはタイプが違うとしか思えないのだが。

その点、本書では付かず離れずというところか。秀吉の評価も高いが、信長依存な記述も見られる。いや、俺だって、秀吉の全てが彼自身のオリジナルというつもりまではないけれど。

信長は好きだけど、ちょっと過大評価ではないのか。そう思う人は明石散人『二人の天魔王 「信長」の真実』がおすすめ。信長と足利義教を比較している視点が新しくてショッキング。