- 雪国

2013/12/06/Fri.雪国

米国ミネソタでは今週から雪が積もり始め、最高気温が零下十七度という日もありました。瀬戸内の温暖な気候の下で生まれ育った私が想像したこともない風景に目を奪われる毎日を送っています。

雪が降るすなわち寒いという以外の認識を持っていなかった私は、五感を初めて刺激する出来事の一つ一つに心を動かされます。肺腑を充たす、決して冷たいだけではない爽やかで清涼な空気。うっすらと舞い降りた粉雪が風に吹かれて舞い上がり、陽の光を反射して煌めく様。歩道の雪が融け、再び凍り、最後は人々の歩みに砕かれて玉砂利のように敷き詰められること。木々から雪が落ちる際の重量感を伴った音。寒いはずなのに、不思議と暖かく感じられる瞬間。街灯に照らされた雪の街が穏やかな明るさに包まれる美しさ。来月やって来る妻もこの景色を気に入ってくれるかしら、そんなことを思うと気分も少しく躍ります。

振り返れば、渡米直後の四月にも雪が降っていましたが、これらの光景に想いを馳せることはありませんでした。やはり余裕がなかったのでしょう。ということは、私もちょっとは成長したのでしょうか。こんなことも嬉しく思われます。

などという清少納言ばりの繊細な感性が俺にもあれば楽しく暮らせるのだろうが、現実には鼻汁の氷柱つららでそれどころではない。しかも懇意にしているスキンヘッドのコンビニ店員が言うには、一月二月が最も寒いらしい。まだまだこんなものではないという。エラい土地に来てしまった。